阿南町新野の国重要無形民俗文化財「新野の盆踊り」が14日夜、始まった。新型コロナウイルスの影響で2020、21年は2年連続で中止となり、3年ぶりの開催。盆ちょうちんが飾られた郷愁漂う新野商店街には、夏の風物詩になっていた老若男女の声が久しぶりに響いた。
新野の盆踊りは、「新野高原盆踊りの会」(山下昭文会長)が伝える笛や太鼓などの鳴り物を一切使わない素朴な踊り。櫓の上で踊る「音頭取り」の「音頭出し」とその周りに輪をつくる踊り子の「返し」の声だけで行う。400年以上の歴史を誇り、「先祖の御霊と踊る盆」として精霊供養のための御霊を迎え、御霊慰安踊り、神送りといった信仰的要素が強いのが特徴だ。
踊りは「すくいさ」をはじめ、「高い山」「音頭」「十六」「おさま」「おやま」「能登」の7種類。例年は17日早朝に踊る「能登」以外の6種類を交互に交えながら毎晩9時ごろから翌朝まで踊るが、今年は新型コロナ対策として14、15日は午前0時までに短縮した。
初日の14日は午後8時ごろ、市神様の社に集まって神迎えの祭りを営んだ後、盆踊りを開始。やぐらを中心に色とりどりの浴衣を着た踊り手たちが参加し、徐々に輪を広げていった。
盆踊りの会は、地元の小中学生への継承にも注力しており、今年も7月下旬に恒例の講習会を開いて指導。この日は小学3年生以上が法被を着て踊りの輪に加わった。昨年に海外から同地区に移住した新野小5年の内田櫂星君(10)は「盆踊りに参加するのは初めてで、扇子の使い方が難しかったけど楽しい」と話した。
山下会長は「多くの人が踊ったり観覧に集まってくれてうれしい」と笑顔。「コロナ禍で悩みながらの開催となったが、17日の朝にはやって良かったと思い終われるようにしたい」と語った。
祭りの最高潮は17日明け方。「能登」を待った後、切子灯ろうを燃やして盆行事の幕を閉じる。
◎写真説明:商店街に輪をつくる新野の盆踊り