モロッコで開催中の国連教育科学文化機関(ユネスコ)政府間委員会は日本時間11月30日夜、阿南町の「和合の念仏踊り」「新野の盆踊り」などを含む24都道府県41件の国指定重要無形文化財をまとめた「風流(ふりゅう)踊」を、無形文化遺産に登録すると決めた。飯田下伊那地域で継承・保存に携わる関係者らは登録を歓迎する一方で、担い手不足の解消や増加が見込まれる観光客への対応など課題を指摘する声も上げた。
風流踊は、華やかな人目をひくという「風流」の精神を体現し、衣装や持ち物に趣向を凝らして歌や笛、太鼓、かねなどではやし、踊る民俗芸能の総称。除災や死者供養、豊作祈願、雨乞いなど、安寧な暮らしを願う人々の祈りが込められている。
それぞれの地域の歴史と風土を反映し、多彩な姿で受け継がれており、地域の活力の源としての役割を果たしているが、一方で人口減少や少子高齢化による担い手不足が共通の課題になっている。
飯田市追手町の県飯田合同庁舎では1日、南信州地域振興局が登録を祝う懸垂幕を掲げた。1階ロビーには、和合の念仏踊りと新野の盆踊りを中心に飯田下伊那の伝統芸能を紹介するパネルも展示し、「この機会に魅力を再確認し、担い手や活動支援などさまざまな形で民俗芸能に係わる人を増やしていければ」(リニア活用・企画振興課)とした。
和合の念仏踊り保存会の平松三武会長は「コロナ禍でも一度も中断せずに今までやってきた取り組みが認められた」と喜び、「担い手にとっても世界に認められる伝統芸能に携わっているという誇り・自信になる。さらに活気付くのではないか」と期待を寄せた。
飯伊の民俗芸能関連団体や行政でつくる南信州民俗芸能継承推進協議会の会長も務めており、「南信州には神楽や獅子舞など数え切れないくらいの民俗芸能が残っている。文化芸能を通じて多くの人に訪れてもらうとともに、地域の人たちに南信州に住んでよかったと思ってもらいたい」と語った。
新野高原盆踊りの会の山下昭文会長は「風流踊の登録で、新野にも盆踊りを見ようと来る人が増えると思うが、来年やってみないと分からないことも多く、喜びと不安の両方がある」と話す。地区の人口減少とともに参加者も減る中、「カメラに収めるだけでなく、一緒に踊って魅力を感じてほしい。参加者が多ければ櫓の上で踊る人たちも張り合いが出てくる」とした。
県内では跡部の念仏踊り(佐久市)も風流踊に含まれている。県教育委員会によると、県内の文化財のユネスコ無形民俗文化財登録は初めて。登録を伝統継承へ結び付けられるかが、今後の課題になる。
◎写真説明:ユネスコ無形民俗文化財登録を祝う懸垂幕(県飯田合同庁舎)