阿南町の「和合の念仏踊り」と「新野の盆踊り」を含む「風流(ふりゅう)踊」のユネスコ無形文化遺産登録を記念した「第1回南信州民俗芸能フェスティバル」が26日、阿南町西條の阿南文化会館で開かれた。300人を超える観客とライブ配信のカメラを前に、伝統を継承する保存会が踊りを披露。登録をきっかけに保存継承の機運が一層高まることを期待した。
風流踊は、華やかな人目をひくという「風流」の精神を体現し、衣装や持ち物に趣向を凝らして歌や笛、太鼓、かねなどではやし、踊る民俗芸能の総称。24都道府県41件の国指定重要無形文化財をまとめており、県内では和合の念仏踊りと新野の盆踊りの他、佐久市の跡部の踊り念仏を合わせた3つが含まれている。
上演に先立ち、國學院大学の小川直之教授が「ユネスコ無形文化遺産登録をどう活かすか」と題して講演。南信州は平安時代までさかのぼる歴史があり、江戸時代に各地に広まった芸能などが蓄積・継承されている「日本でも数少ない地域」とし、「山地に立地するために外部と交流し、政治経済の中核地域の文化を積極的に受容したことで、地域文化として育まれてきた」と紹介した。
小川教授は、無形文化遺産への登録で「国の補助金などを受けやすくなる」とした一方、「登録されたからといって新しいことをする必要はない。まずは保存が第一」と指摘。主体となる保存会と地域住民の意思が重要―と強調し、「登録は終着ではなく新たな出発点だ」と話した。
芸能上演では、和合の念仏踊り保存会が「庭入り」を実演。30人余りの行列がステージ上で行進するととともに、踊り手のヒッチキが2人一組となり、テンポの速い拍子に合わせて「ヤートーセー」の掛け声とともに飛び跳ねながら激しく体をぶつけ合った。
新野高原盆踊りの会は、「すくいさ」「十六」「おさま甚句」の3つの踊りを披露。笛や太鼓などの鳴り物を使わず、人の声だけで音頭をとる特徴的な盆踊り輪に加わるの楽しさを観客に伝えた。
この日は、来飯した跡部の踊り念仏保存会も出演し、太鼓やかねを打ち鳴らして念仏を唱えた。県内3つの風流踊が一堂に会し、会場は大いに盛り上がった。
主催した南信州民俗芸能継承推進協議会の平松三武会長は「多くの人を集めて開催できた。コロナ禍で各地の保存団体は厳しい状況が続いているが、元気づけられる日になったのでは」と喜び、「今回は跡部の保存会が出演してくれたが、いずれは東信で披露する機会をつくれたら」と話していた。
◎写真説明:和合の念仏踊り保存会による庭入りの実演