阿智村清内路の下清内路諏訪神社と建神社で15日、秋季祭典奉納煙火があった。江戸時代の享保年間(1716~36)から続く伝統で県無形民俗文化財の「手作り花火」が繰り広げられ、今年は約300年続く歴史の中で、初めて女性が大三国の火薬を詰め、柱への取り付けをした。
今年はコロナ禍を考慮して観客を地区住民に限ったが、例年通り、諏訪神社の部と建神社の部と2度にわたって仕掛けと大三国を奉納。下清内路煙火有志会(門野祐一会長)が1カ月以上の間、連日火薬づくりに取り組んできた。
境内に張り巡らされた鉄線を「綱火」が走り、3カ所に設けられた囲い櫓(やぐら)の仕掛けに点火。音を上げて火を噴きながら回転する「火車」や「花傘」、周囲に火の粉を吹き散らす大迫力の「大噴水」が点火され、見事に成功すると住民から拍手と歓声が起こった。
クライマックスの大三国も仕掛け同様に2度奉納し、有志会員が降り注ぐ火の粉を全身に浴びながら、「オイサ」と掛け声を上げてきおった。
大三国は代々男性が火薬を填薬(てんやく)し、柱へ取り付けてきたが、今年は史上初めて女性も担当。櫻井里香さん(30)と櫻井真紀さん(35)の2人で、当日朝から午後3時半頃まで火薬を詰め、奉納の最中に約10メートルある柱に登って慎重に大三国を取り付けた。
櫻井里香さんは「自分で良いのかという不安もあったが、やり切った感がありうれしかった。良い花火が咲いて本当に良かった」と感慨深げに語り、櫻井真紀さんは「とても緊張した。清内路の花火には伝統を受け継いでいる誇りがあり、火薬という危険なものを扱う緊張感と、そこから解き放たれた開放感が魅力だ」と話した。
◎写真説明:境内に花火の火の粉が降り注いだ