飯田市を拠点に国内外で演奏活動を続ける和太鼓アーティストのアート・リーさんが12日、芸歴30周年記念コンサート「こぶし」の飯田公演を高羽町の飯田人形劇場で開いた。昼夜2公演に約250人が集まり、節目の演奏に聴き入った。
公演名と同じオリジナル曲の「鼓拳(こぶし)」は後半で演奏。リーさんは自分の手と2種類のバチを使い、タッチと力の入れ具合を変えながら多彩な音を奏でることで、和太鼓の魅力を存分に表現した。
前半と終盤では、2004年の結成以来、行動を共にしてきた和太鼓TOKARAのメンバーとともに代表曲の数々をリズミカルに演奏し、持ち味のアドリブで楽しませた。
「客席でぜひ踊って」というリーさんの呼び掛け通り、夜の部の最終盤では演奏の楽しさに魅了された幼児が立ち上がってステージ前で踊りだすなど、盛り上がりが最高潮に達した。
コロナ禍の療養生活を経て記念公演に臨み、昼夜の2ステージを無事終えたリーさんは「非常にうれしい。やはりライブは楽しい」と感無量の表情。20年にわたって交流してきた「アンサンブル・リベルタ」の山田典山さん(愛知県)は「切れ味の鋭い演奏が戻ってきた」と祝福した。
リーさんはシェフになろうとカリフォルニア州の料理学校に通っていたが、音楽室に貼られていたコンサートのポスターに興味を持ったのをきっかけに、和太鼓の世界へ。芸術ビザを取得して来日し、縁あって芸能の谷・飯田に根を張った。
当初はアシスタントスタッフとして公演の運営に携わり、のちにTOKARAのメンバーになった市瀬ゆかりさんは、20年前から進行性の病気と折り合いをつけながら活動を続けるリーさんについて「何があってもあきらめない。今日が最後のステージかもしれないという思いで臨み、それを楽しんでいる」と思いを代弁。「60周年記念公演にもぜひ来てください」と語り掛けた。
今後は岐阜県や愛知県、海外で公演する。7月23日には、大江戸助六太鼓(東京)をゲストに迎えた「幸い下伊那和太鼓フェスティバル」を飯田文化会館で開く。
◎写真説明:こぶしで演奏するリーさん(飯田人形劇場で)