飯田市上久堅の風張(かざはり)、上(かみ)平の両地区で4日、伊那谷のコト八日行事の一つ「事念仏」があった。子どもたちが地区の家々を訪れ念仏を唱えて回り、厄除けを祈願した。
コト八日行事は飯田下伊那の竜東地域などに伝承される習俗で、2月8日を中心に疫病神を集落の外に送り出す「事の神送り」があり、上久堅では前日か数日前に事念仏を行う。子どものみでするのが特徴で、今年は3年ぶりに実施した。
地区の小中学生10人が集まり、風張地区の集会所からスタート。皆が同じ方向を向いて整列し、「今日事を申します」「光明遍照 十方世界 念仏衆生 摂取不捨」と言った後、「南無阿弥陀仏」を9回繰り返した。さらに「弥陀願以功徳 明道誠一切道発 菩提心清浄安楽」とよどみなく続けた。
中学生が太鼓を持つ「頭取り」、鉦(かね)を持つ「副頭取り」を担当。太鼓や鉦に合わせ、集会所では八方を向いて8回同じことを繰り返した。
上平神社に行った後、地区の各戸に出発。子どもたちは玄関の前で念仏を唱え、出迎えた住民たちから「オフセ」をもらっていた。午後4時に開始し、同9時頃まで約5時間かけて風張、上平それぞれ30戸、計60戸の家を回った。
副頭取りを務めた竜東中学校1年の女子生徒(13)は「久しぶりだったが楽しくできた。この1年地域の人が元気でいてほしいとの気持ちを込めた」と話した。
かつては各家の長男のみで行っていたが、それでも50人ほどで回った時代もあったという。頭取りの保護者大平正信さん(50)は「続けてきたものをコロナで途絶えさせてはいけない。地区固有の伝統を守っていきたい」と語った。
◎写真説明:子どもたちが集落の各家で念仏を唱えて回った