「歌会始の儀」が18日、皇居で行われた。飯田下伊那地域では、飯田市上郷黒田の木下瑜美子さん(80)の歌「歌会を切り上げ現場へ向かふ友つねに木の香のする大工なり」が、国内外から寄せられた1万5472首から、入選10首に次ぐ佳作に選ばれた。
お題は「友」で、佳作は木下さんを含む15首が選出された。
木下さんは次男を産んだ26歳頃、育児や子どもとの日常を歌で記録しようと短歌を始めた。地元の歌会で活動し、1975年には結社「潮音」に入り現在は幹部同人。家事や用事を済ませ、夜に台所で歌を考えるのが日課という。木下さんは短歌の魅力を「目で見たり耳で聞いたことに、ぴったりの言葉が浮かんだときの楽しさ」と話す。
2005年からは南信州新聞社主催の南信州短歌教室で講師を務める。歌会始への詠進は歌の師のすすめがきっかけで、これまで30回ほど行ってきており、15年に大雪での体験を詠んで初入選。21年には孫・玲奈さんも入選した。
作品は、短歌サークルで15年ほど活動をともにする仲間について詠んだもの。趣味の短歌と大工の仕事を同じように大切にしている姿に「その人の生きる希望が見えた。感心した」という。「趣味から仕事への切り替えの潔さにも引かれた」と話す。
「日常を詠んだ作品だったので結果を聞いたときには驚いた」と木下さん。「仲間とほめ合ったり高め合ったりすることで元気をもらう。今回の佳作を機にこれからも歌を詠み続けたい」と話していた。
◎写真説明:歌会始で佳作に選ばれた木下さん