「南信州民俗芸能パートナー企業」の勉強会が4日、オンラインで開かれた。南信州民俗芸能継承推進協議会アドバイザーの櫻井弘人さんによる講演を通じ、民俗芸能の地域資源としての価値を再確認し、支援の意義を確かめた。
南信州民俗芸能パートナー企業制度は、地域に数多くある貴重な民俗芸能が高齢化や過疎化により継承が難しくなる中、地域の民間事業所の力で継承を支援する仕組みづくりとして2016年に始まった。
従業員の民俗芸能参加推奨(休暇取得促進)や保存・継承団体を協力・支援する企業が、南信州民俗芸能継承推進協議会(南信州広域連合)と協定を結び、県が社会貢献企業として公的に認証する。現在は101社が登録している。
勉強会は、新型コロナウイルスの影響で民俗芸能の祭事が中止や外部非公開になるなど、継承がさらに厳しい状況を迎える中、パートナー企業に民俗芸能の魅力や継承の必要性、制度の趣旨を再認識してもらい、今後の支援の参考にしてもらおうと開催した。
櫻井さんは「この地域には本当にすごい民俗芸能が残っており、守り伝えようとしているが厳しい状態にある。民俗芸能はかけがえのない地域個性。地域のために役立ててほしい」と呼び掛けた。
南信州地域の民俗芸能は、霜月神楽など中世からの古い様式を残す芸能、人形芝居や歌舞伎などの近世の芸能、人形劇フェスタなど現代の芸能まで「日本の芸能史の縮図」だとした。
特徴ごとに各民俗芸能を解説した。遠山霜月祭では百姓一揆伝承の御霊鎮め、飢饉(ききん)や疫病のたびにより強い思いを込めて進化してきた様子を紹介。新野の雪祭りでは多様な芸能が凝縮されており、ビンザサラ舞は「全国に残っているところもあるが最もきちんとした形で伝承している」とした。
この他、近世に伊那谷各地で人形浄瑠璃と歌舞伎が熱心に上演された様子、地域ごと個性豊かな獅子舞、城下町の祭りから飯伊最大の祭典へと発展した飯田お練りまつりなどについて解説した。
「民俗芸能は強烈な地域個性」として活用を訴えた。民俗芸能を通じて対外的に地域の魅力を発信すれば交流の拡大、持続可能な地域につなげられる他、地域内での伝承を通じて若者が地域に誇りを持って住み続け、祭りを通じてコミュニティーに活力を与えるとした。
民俗芸能は持続可能な地域づくりの核となるもの、古来から伝わる日本人の心を学ぶ場・教材になるとし「かけがえのない民俗芸能を守り、生かすために力を貸してほしい」と呼び掛けた。
パートナー企業は、民俗芸能の記録撮影や舞台設営、運営ボランティアなどの人的支援、社内イベントなどでの民俗芸能団体の出演依頼やPR協力などの理解・交流活動、資材や寄付など物的支援などの取り組みを行っている。優れた支援を行った企業への表彰制度も導入している。
◎写真説明:オンラインで行われた勉強会