19、20の両日に予定している泰阜村出身の歌人・金田千鶴(ちづ)を取り上げた「翔ぶ!~金田千鶴の生きた道~」の公演に向けて、飯田下伊那地域の演劇集団「演劇宿」が稽古に取り組んでいる。新型コロナウイルスの影響で、2020年3月から2度の延期と中止を重ねてきた同公演。出演者たちは、地域の演劇文化の継承を願って練習に励んでいる。
演劇宿は、飯田文化会館が1993年度から実施した市民構成劇創作事業によって発足。劇作家・演出家のふじたあさやさん(川崎市)の指導を受けながら活動している。
「翔ぶ!」の題材となった金田千鶴は、1902(明治35)年に泰阜村平島田で生まれた。22年に上京するも、わずか2年後に結核にかかり帰郷。32歳で亡くなるまでの10年間で831首の短歌を詠み、小説や散文作品も残している。アララギ派の女流歌人として活躍した。
初演は2002(平成14)年。千鶴の生涯を、詠まれた歌を織り交ぜながらドキュメントタッチに描いている。飯田文化会館と泰阜村で計5公演上映し、3000人以上が鑑賞した。
今回は、郷土の先人に光を当て、演劇を通じて語り継ごうと再演を決めた。
これまでコロナウイルスの感染拡大によって制限されながらも、約30人のメンバーで稽古を進めてきた。県にまん延防止等重点措置が適用された今年1月からは、集まっての練習ができなくなり、それぞれが個人練習に励んだ。
本番を2週間後に控えた現在は、衣装を合わせての通し稽古や、ふじたさんによる演技指導などを行っており、メンバーも熱が入る。
主演の千鶴を演じ、遠縁にもあたる白井明美さん(48)は「公演ができることに喜びを感じる。文学的な才能や豊かな心、情熱を持つ千鶴を思いながら演じたい」と話している。ふじたさん(88)は「この地域にとって、忘れてはならない人。演劇を通して彼女の生き方を多くの方に知ってもらいたい」と話していた。
公演は19日が午後6時、20日が同1時から。会場は飯田文化会館ホール。チケットは一般が1500円で高校生以下が500円(当日は200円増)で販売している。
問い合わせは飯田文化会館(電話0265・23・3552)へ。
◎写真説明:本番の衣装で稽古に取り組むメンバー