南信州民俗芸能継承推進協議会(平松三武会長)は3日、「第6回南信州民俗芸能継承フォーラム」を飯田市座光寺のエス・バードで開いた。約100人が参加し、「南信州の誇り『民俗芸能』の未来を共に考えよう」をテーマに講演やパネル討議を聴講。ユネスコ無形文化遺産への登録を目指す動きを踏まえながら、魅力ある地域個性の発信や継承について考えた。
前半は國學院大學教授の小川直之さんが「民俗芸能と地域社会―魅力ある地域個性とは何か」と題して講演。「飯田下伊那地域は日本列島の東西文化の交差点」とし、雑煮や年取り魚を例に挙げた。阿南町和合の念仏踊りには平安時代からの踊り念仏が含まれていること、同町新野の盆踊りには室町時代以前の日本人の死霊観が表れているとし、「古くからの伝統や祭りに、中世・近世の文化が重層的に重なり伝承されていることがこの地域の個性の1つ」と強調した。ユネスコ無形文化遺産を目指す動きについては「個性を発信していく手段」とした。
後半は、進行役に県立歴史館特別館長の笹本正治さんを迎えて「コロナ禍を乗り越え、未来に繋ぐ」をテーマにパネル討議をした。上村遠山霜月祭保存会の宇佐美秀臣さん、和合念仏踊り保存会の菊島延幸さん、天龍村向方お潔め祭り芸能部の本多紗智さんの3人がパネラーを務めた。
本多さんは、コロナ禍で活動が制限さる中で取り組んだお宮の修繕などについて動画で紹介。「先のことで悩むのではなく、今できることに精いっぱい取り組むことの大切さを学んだ」と振り返った。
10年前に阿南町に移住した菊島さんは、自身を迎え入れてくれた住民たちの温かさに触れ「小学校で笛や踊りを練習する子どもたちが大人になるまで続け、伝統を引き継いでいく」と思いを語った。
宇佐美さんはユネスコ無形文化遺産について「登録を目的にするのではなく、文化の継承への思いが大きくなるチャンス」とし「外部の方の柔軟な新しい意見と自分たちの思いを融合させ、伝統を繋いでいく」と話した。
平松会長は「飯伊にはたくさんの伝統ある祭りがあり、その多くが人手不足などの課題を抱えている。多くの人に知ってもらい、伝統芸能について考えるきっかけとなれば」と話した。
◎写真説明:エス・バードで開いた南信州民俗芸能フォーラム