飯田下伊那地域各地の寺社などで3日、節分行事が執り行われ、多くの人らが豆まきで邪気を払い、1年の無病息災などを願った。
飯田市座光寺の元善光寺(本多秀道住職)では、恒例の大護摩祈祷(きとう)「節分会」が3回にわたり行われ、各回とも本堂からあふれんばかりの人が参加した。
本多住職は護摩木をたきながら祈とう。参加者一人一人の名前と身体健全、交通安全、社運隆盛などの願いを読み上げ、成就を祈願した。
祈とう後には本多住職をはじめ、かみしも姿の総代らが「福豆」をまいて厄除け。同寺では「各家庭から追い払われた鬼を、逃げ込んだお寺からも追い払ってはかわいそう」と「慈悲の心」から、豆まきの掛け声は「福は内」のみ。大きな掛け声とともに勢いよく福豆がまかれると、参加者らはご利益を得ようと懸命に手を伸ばし、受け取っていた。
毎年大護摩祈とうに参加しているという高森町の男性(70)は、家内安全を祈願。東京などで自立して暮らす4人の子供たちの祈とうも依頼したといい、「家族皆が健康で幸せに暮らせる1年になれば」と話した。
飯田市滝の沢の権現山白山社(近藤政彰宮司)では、宮司と僧侶がそれぞれ祈祷する「神仏習合」の節分祈祷祭が行われ、厄年を迎えた老若男女が、厄除けや交通安全、商売繁盛、学業成就などを祈願した。
100年余り続く伝統の行事。婚嫁殿(社務所)にまつられる十一面観世音菩薩の前で僧侶が読経した後、本殿で宮司が祈祷。参列者一人一人の名前を読み上げていった。
続く「追儺(ついな)の儀」では、宮司らが桃の木で作った弓とアシの矢で、拝殿の四方と天を射った後、参列者らが鬼に豆をぶつけて退治した。
祈祷の間、境内では赤鬼、青鬼が暴れ回り、子どもらを泣かせて回ることでも知られる同節分祭。普段いたずらが過ぎる子供を鬼にしかってもらおうと、毎年多くの親子連れも訪れる。
この日も、こん棒を地面に打ちつけたり、大きな奇声を発したり、嫌がる子供を無理やり抱き上げたりと暴れ回ると、あちこちから泣き声。一方、まったく驚かない子供もいて、笑顔で記念撮影におさまる姿も見られた。
最後は、鬼に豆をぶつけて退散させ、鬼とともに自分の中の「悪い気」も追い払った。
岡谷市から滝の沢の自宅に帰省し、1歳の子供や母親らと祈とうに参加した女性(29)は、「1年を平穏に過ごせることを願った」という。鬼をみた子供の様子は「思ったほど怖がらなくて驚いた」といい、「健やかに成長してくれたら」と思いを寄せた。
◎写真説明:「福は内」の掛け声で(元善光寺)