6月に群馬県で開かれたNHK学園生涯学習フェスティバル伊香保短歌大会で、飯田市馬場町の柴田康代さん(78)の作品「堰切ると先を争い真っしぐら水は棚田へ『仕事始めだ』」が、群馬県知事賞と古谷智子(「中部短歌」編集委員・選者)選の特選に輝いた。
大会には短歌2304首の応募があり、4人の選者がそれぞれ特選3首、秀作20首、佳作40首を選んだ。
柴田さんは、出身地が群馬県であることを縁に毎年参加している。これまで秀作の受賞はあったが、県知事賞、特選は今回が初めて。「自己流で取り組んできたので、まさか県知事賞や特選をいただけるとは思いもしなかった」と驚き、「20年余り続ける作歌の集大成ともいえる大会になった」と喜んだ。
選者の古谷さんは「棚田の美しい風景に爽やかな水音が響いて気持ちのいい一首。塞き止められて今か今かと出番を待っていた水が、一気に流れ出す勢いがよく伝わる。結句は水を擬人化して効果的」と評した。
柴田さんの作歌スタイルは「さあ考えよう」と机に向かうのではなく、日常生活の中で自然と頭に歌が浮かぶという。「どういうわけか、五、七、五、七、七のリズムに乗って歌が生まれてくる。自己流で技術がないので、あとは助詞や言葉を少し整えるだけ」と柴田さん。自然体で温かみのある童謡の様な歌は、情景を一瞬でイメージさせ、笑顔を誘う。
今年1月に開かれた第21回NHK全国短歌大会で秀作を受賞した作品「子どもってうんちが好きだ分身と思うか絵には目を書いており」もその一つ。幼い子どもたちの楽しそうな様子や、身近な同様の場面を想起させる。
同歌は3人の選者が秀作に選んだ。柴田さんは「『うんち』を題材とした歌の出品に迷いがあったが、同じ短歌を3人に選んでいただき信じられない気持ち。『短歌として認められたのかな』と、日がたつにつれ喜びを感じている」と顔をほころばせた。
◎写真説明:知事賞、特選の受賞を喜ぶ柴田さん