飯田市川路の天竜峡第一公園にある「ああモンテンルパの夜は更けて」の歌碑前で9月29日、同市千栄の歌手、清水智さん(64)が、ギターの弾き語りコンサートを開いた。
戦後、同曲がフィリピンのキリノ元大統領の心を動かし、モンテンルパ刑務所の日本人受刑囚特赦につながった歴史を、多くの人に知ってもらいたいと企画。約160人の聴衆を前に、同曲をはじめ全10曲を、平和への願いを込めて歌い上げた。
同曲は1952(昭和27)年9月に発表され、渡辺はま子さんと宇都美清さんが歌いヒット。歌詞は同刑務所に収容されていた、同市松尾出身の代田銀太郎さんが、望郷の念を込めて書いた。代田さんは当時7年以上服役しており、死刑判決を受けていた。
渡辺さんは曲発表後の同年12月、刑務所を慰問し、受刑囚109人を前に歌声を披露。翌年、同曲のオルゴールが当時のキリノ大統領に贈られると、メロディーと歌詞に心を打たれた大統領は、全受刑囚を釈放し日本帰国を許した。
歌碑は84年4月、長野日比友好協会が創立10周年を記念して建立。代田さんと渡辺さんも参列し、渡辺さんが歌碑の前で歌を披露した。
この日のコンサートには、代田さんの義理のいとこで代田さんを「あにい」と慕う、同市龍江の林征子さん(75)も足を運んだ。「こんなに多くの人が来てくれるとは思っていなかった。歴史や『あにい』を知ってもらう良い機会になったと思う」と喜んだ。
◎写真説明:歌碑の前で歌声を響かせる清水さん