飯田市上村・南信濃地区の各神社が12月に行う湯立て神楽で、国の重要無形民俗文化財に指定される「遠山の霜月祭り」に向け、舞やはやしの練習が始まっている。最も早い7日に本祭を行う上村中郷の正八幡宮では、14日に練習を開始。住民のほか、地区外から参加する「応援団」、上村小学校の児童ら40人余が集まり、本番に向けて一つ一つの動きを丁寧に確認した。
上村、南信濃の各神社とも、人口減少、少子高齢化の影響を受け、近年は祭りの担い手不足に悩んでいる。今年は、例年12月1日の開幕を飾ってきた南信濃木沢八日市場地区の日月神社と、隣接する中立地区の正一位稲荷神社(隔年交代で実施)が、湯立て神楽を行わず神事のみとすることを決めた。
両神社の祭りを取り仕切る八日市場自治会は11世帯25人余り。遠山郷観光協会によると、「人口減少と担い手の高齢化により湯立ては困難と判断した」という。
中郷地区は約30世帯。独居が多く、祭りに参加できる中学生男子は1人だけ。継承に危機感を強め、地区住民のみで執り行ってきた祭りを、外部に開放することを決断し、5年ほど前から舞やはやし、裏方仕事などに携わる「応援団」を募っている。
昨年は10人以上の応援があり、この日も多くの人が地区外から参加した。同地区の遠山貴志さん(66)は「地区住民よりも応援団の数の方が多いほど。地区だけでは舞い手の確保が難しいのでありがたい。一生懸命練習してくれてうれしい」と喜んだ。
昨年初めて参加し、舞い手を務めた同市鼎の男性(28)は「以前から祭りに興味を持っていたが『地元のもの』という意識があったので、まさか参加できるとは思わなかった。地区の皆さんが敷居を下げ、温かく迎えてくれるので飛び込みやすかった」と振り返った。
「昨年は舞を覚えることでいっぱいいっぱいだった」としつつ、「今年は動きの一つ一つに注意を払い、よりきれいに舞いたい。伝統文化の継承に少しでも役に立てたら」と力を込めた。
今年の霜月祭りは、7日に中郷正八幡宮と南信濃小道木熊野神社、11日に上村上町正八幡宮、13日に南信濃和田諏訪神社と上村下栗拾五社大明神、14日に南信濃木沢正八幡神社と上村程野正八幡宮、15日に南信濃八重河内尾野島正八幡神社で行われる。上村上町でも応援団を募集している。
日程など詳細の問い合わせは遠山郷観光協会(電話0260・34・1071)へ。
◎写真説明:霜月祭りに向け舞の練習(上村中郷)