日夏耿之介の資料を探し中 飯田市美術博物館

文化・芸能

[ 2014年 10月 9日 木曜日 9時32分 ]

 飯田市美術博物館は同市出身の詩人・英文学者、日夏耿之介(1890―1971年)に関する2種類の資料の行方を探しており、広く情報の提供を呼び掛けている。1つは日夏が翻訳し、作家の三島由紀夫(1925―70年)の熱意も受けて、晩年近くまで加筆修正の朱を入れたという文庫本「サロメ」の現物。もう1つは親交があった作家の芥川龍之介(1892―1927年)から日夏に届いたとされる書簡の数々だ。

 戯曲「サロメ」はオスカー・ワイルドの原作で、日夏が翻訳した角川文庫版は52(昭和27)年に刊行された。市美術博物館によると、戯曲家としても活躍した三島は日夏訳を高く評価し、自ら演出する戯曲の台本に採用した。

 日夏と三島は劇作家の岸田國士(1890―1954年)の一周忌の席で出会い、三島は日夏訳のサロメで戯曲を上演したい旨を相談。意気込みに触発された日夏は上演と再版に期するため、飯田市内で過ごした晩年まで文庫本に朱を入れ、表現や格調などで手直しを重ねたという。

 日夏が没後の78(昭和53)年に刊行された日夏全集には、朱を入れた文庫本を基にした改訂版「サロメ」が収録されているが、文庫本そのものは行方不明となっている。

 三島の戯曲「院曲サロメ」は60(昭和35)年に岸田今日子主演で、三島が没後の71(昭和46)年にも追悼公演で上演されている。

  ◇   ◇

 芥川の書簡も行方分からず

 一方、日夏は年齢が近い芥川とも親交があったという。1914(大正3)年の「愛蘭土(アイルランド)学会」創設時に出会い、共に神奈川県鎌倉市に滞在していたこともあり、かつては日夏の手元に芥川から届いた書簡が保管されていたとされる。

 48(昭和23)年に日夏から都内の出版社編集長宛てに「貸した芥川の書簡を至急返却してくれたまへ」と催促する手紙は確認されているものの、書簡はいずれも所在不明。市は78(昭和53)年に遺族らから、日夏にゆかりの書簡や原稿、蔵書など数千点余の寄贈を受けているが、芥川からの書簡はない。

 市美術博物館の織田顕行学芸員は朱入りの文庫本「サロメ」と芥川の書簡について「いずれも、日夏の人となりや人脈を検証していく上で重要な資料になる」と指摘。同館のホームページなどを通じても情報提供を呼び掛けていく。

 資料の発見時は所有者との「応相談」となろうが「できれば当館へ提供を、不可能な場合は調査研究や企画展などの際にお貸し願えれば」としている。

 情報提供など問い合わせは飯田市美術博物館(電話22・8118)へ。

  

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