標高1500メートル、中央アルプスや伊那山脈が目の前に広がる眺望美しい大鹿村大池高原に5月末、発酵食品と地元食材にこだわった料理を提供するカフェレストラン「HAKKO OOSHIKA(ハッコーオオシカ)」がプレオープンした。手掛けるのは村出身の松澤莉央さん(30)と北澤淳さん(36)の2人。生まれ育った村の人口や事業所が減少する現状に、「村内に新しい風を興し、村を盛り上げたい」と意気込む。
大池高原の近くに自宅があり、同所からの景色が子どもの頃から大好きだったという北澤さん。県職員として勤務する中、地域の課題解決に取り組む多くの人たちから刺激を受け、「地元の魅力発信や創造にチャレンジしてみたい」との思いを強めた。
「始めるなら大池高原で」と考えていたところ、タイミング良く村が高原にある村有施設「大池センターハウス」の活用事業者を募集。「運命的なチャンス」と挑戦を決意した。
村の公募要件は飲食店。公務員のため起業や営利活動には規制が生じ、飲食店のノウハウもないため、同じ志を持つ仲間探しをスタート。村関係者と話をする中で、松澤さんの名前が挙がり声を掛けた。
松澤さんの家はブルーベリー農家。家で栽培したブルーベリーを使い、スイーツなどを提供する飲食店を営むことが長年の夢で、製菓の専門学校を卒業後、ケーキ店や飲食店などに勤務し経験を重ねてきた。
北澤さんとはそれまで面識がなく、突然の誘いに戸惑いや不安があったものの、「子どもの頃に描いた夢への熱意が今も変わっていない。村を何とかしたいという思いも共感できる。だったらこのチャンスを逃すのはもったいない」と、差し出された手を取った。
昨年11月に松澤さんが代表を務める合同会社「風の谷の大鹿」を設立し、店のオープンに向けて準備を進めてきた。プレオープンを無事に迎え松澤さんは「夢を一つ形にすることができてうれしい。村民の方が気軽に訪れて食事を楽しむことができる場所、村外から来た人たちが村の素晴らしい景観や食の魅力に触れられる場所にしていきたい」と力を込める。
北澤さんは「大池高原の環境を生かしたアクティビティなども整備しながら、飲食店を拠点にさまざまな人が訪れ、村を深く知ることでつながりを広げていく流れをつくりたい」と話した。
営業日は金、土、日曜日。ランチが午前11時~午後3時、ディナーは事前予約制。プレオープン期間は7月上旬まで。施設改修を行い、同月下旬にグランドオープンする予定。問い合わせは同店(電話050・8883・8368)へ。
◎写真説明:夢を形にした北澤さんと松澤さん