ユズを使った伝統の保存食「柚餅子(ゆべし)」の加工が25日、天龍村坂部地区で始まった。天龍村の元地域おこし協力隊らでつくるNPO法人「ツメモガキ」が、地元の生産者組合から製造を引き継いで3年目。計500個の製造を目標に12月上旬まで加工を続ける。
坂部地区では1975(昭和50)年に柚餅子生産者組合が発足し、最盛期には10人余りの組合員で年1万個を製造していた。
過疎化や組合員の高齢化で生産体制の維持が困難になり、組合は2018年に解散したが、組合とともに生産に携わっていたツメモガキが「伝統食を残そう」と継承。組合長を長く務めた関京子さん(87)の指導を受け、20年から生産を再開した。
初日はツメモガキのメンバー3人と関さんが地区の施設「夢工房 左閑辺屋」の加工室に集まり、朝から作業に取り掛かった。ユズの果肉をくり抜いてクルミなどを混ぜた自家製の甘みそを入れて蒸す作業を実施。今後は約3カ月間にわたって定期的にもみながら乾燥させる。
伝統の味を守りながら、アレンジにも挑戦しており、今季は赤みそや黒糖、蜂蜜を使った柚餅子を製造する予定という。メンバーとともに作業した関さんは「若い人が積極的に生産に携わってくれてありがたい。伝統ある柚餅子がつながっていくのがうれしい」と話した。
ユズは村内産を加工するが、同法人によると、今年は村内のほとんどの木が着果量が少ない「裏年」にあたる。収穫量も少なめなことから、PR活動を重視し、オンラインショップや農産物直売所などでの販売分は200個ほどにとどめるという。
ツメモガキの村澤葉花さん(28)は「昨季の製造分は夏までに完売した。京子さんから引き継いだこともあり、毎年楽しみにしている人たちが買ってくれている」とする一方、「柚餅子を知っている人は年配の方が多い。柚餅子という食文化をつないでいくには若い世代に知ってもらえるような機会をつくりたい」と語った。
◎写真説明:ユズの果肉をくり抜くツメモガキのメンバーと関さん(左)