天龍村の元地域おこし協力隊らでつくるNPO法人「ツメモガキ」が手掛ける、同村坂部地区に伝わる保存食「柚餅子(ゆべし)」の乾燥が終わり、24日、販売に向けてメンバーらが一つ一つ包装した。本格的な販売を開始した昨季は約250個を製造し、完売。今季は需要に応えられるよう350個に増産した。インターネットや飯田下伊那地域の農産物直売所などで販売する。
2018年3月に解散した村柚餅子生産者組合で、長年組合長を務めた関京子さん(86)から指導を受け、伝統の味を継承する。同組合は、伝統食を後世に残したいと1975(昭和50)年に発足し、最盛期には10人余りの組合員で年1万個を生産したが、過疎化、高齢化の影響で徐々に組合員が減少。生産体制の維持ができなくなり解散した。
組合の解散前から関さんの柚餅子づくりに携わってきた同法人は、「柚餅子を守ることが地域を守ることにつながる」と、伝統の継承を願う関さんの思いに触れ、担い手として名乗りを上げた。18年12月には柚餅子作り体験ツアーを企画するなど、柚餅子の発信を行いながら、製造、販売に向けた準備を進め、昨年から本格的に販売を開始した。
今季は、昨年12月初旬にユズの中身をくり抜き、同法人自家製の甘みそを入れて蒸す作業を実施。以降約3カ月間、定期的にもむ作業を行いながら乾燥させてきた。この日は、最後のもみ作業と干しあがった柚餅子をきれいに整える作業を行い、個別に包装。すでに注文が入っており、順次発送するという。
作業に加わった関さんは「組合解散後はもう作ることができないと思っていただけに、この年になっても柚餅子を作ることができて本当にうれしい」と笑顔。「豊作できれいなユズを選んでつくることができたので、仕上がりがとてもきれい。味も文句なくおいしい」と太鼓判を押した。
伝統の味を守りながらも、アレンジを加えて新しいことに挑戦するメンバーら。今季は試験的に、砂糖を加えないものや砂糖の種類を変えたもの、砂糖の替わりに蜂蜜を使用したものなどを製造し、仕上がりを確認した。来季以降の販売を見据える。
問い合わせ、注文は同法人のホームページ、フェイスブック、ファクス(0260・32・2158)へ。
◎写真説明:包装を前に仕上げをする関さんと法人メンバーら