全国屈指の日本なしの産地だった飯田下伊那地域を産地として再構築しようと、「南信州日本なし産地再生プロジェクト」が6月30日、スタートした。担い手不足や老木化した園地の改植などの課題解決、産地再生へ向け、生産者や農業関係団体、行政機関が一体となって取り組んでいく。
飯伊の日本なしの栽培は明治初期から始まり、他産地に先駆けて養蚕から切り替えて県内有数の産地となった。昭和50年代以降は二十世紀を中心に価格が低迷し、栽培面積が徐々に減少。その後も高齢化などで生産者・栽培面積が減少し、老木園が増えて生産力が低下している。現状のままでは今後5年間で栽培面積が15%減、生産量は4割減となる見通し。
全国的に出荷量が減少する一方、需要は堅調で単価が上昇。全農長野南信事業所によると、卸売市場では「10年前は1キロ280円ほどだったが今は1キロ400円以上。売りたいがものがない状況」という。
プロジェクトは、関係者が一丸となって産地課題の全てを解決し、日本なしの産地を未来につなげる目的で設立した。本年度中に課題抽出や計画策定を行い、来年度から5年間かけて本格的な産地再生事業に取り組んでいく。
JAみなみ信州、下伊那園芸農業協同組合、全農長野、市町村(飯田、松川、高森、阿智、下條、喬木、豊丘)、県(農業技術課、南信農業試験場、地域振興局農地整備課・農業農村支援センター)が参加する。
設立会議で、JAの塩澤昇常務理事は「飯伊は災害が少なく今後も経営的有利は続く。産地再生を一丸となって進めよう」と語り、現在の倍となる販売額50億円産地の構築を掲げた。
県南信州地域振興局の丹羽克寿局長は「機運を逃さず産地継続へ一体となって取り組む。次期5カ年の地域計画にしっかり位置づけ振興を図りたい」と述べた。
続いて南信試験場の飯島和久場長がプロジェクトの概要を解説。▽担い手確保▽栽培上の課題(凍霜害・病害虫対策、老木園の改植、ジョイント栽培など)▽品種改良(晩生品種などの育成)▽新たな販売戦略(新ブランド構築など)―といった課題の解決、必要な支援に関係者が連携して取り組むとした。
同場の人材育成機関としての機能強化にも言及。同場の農業大学校実科・研究科に通いながら果樹試験場(須坂市)と同様の授業・実習を受けられる仕組みを作るとした。
後半は、鳥取中央農協湯梨浜サテライトセンターの川上雅弘さんから「スーパー梨団地」など鳥取県の産地再生の取り組みを聞いた。
◎写真説明:日本なし産地再生へプロジェクト設立