昨年度から学習塾「花まる学習会」(さいたま市)と提携して独自のモジュール学習を始めるなど、特色ある教育環境の構築を目指す売木村で10日、初となる「うるぎ教育フォーラム」が開かれた。「山で育てる~小さな村から大きな発信~」をテーマに、小中学校の公開授業やシンポジウムを通じ「山村だからこそできる教育」について議論を深めた。
村制70周年、小中学校の併設70年の記念事業に位置付けた。山村留学が開設から36年を迎える中で、村教育委員会は村で子どもを育てることの有用性を提唱。「日本の教育の新しい形を模索する機会にしたい」と初めて企画した。
小中学校のモジュール授業をはじめ、思考力、外国語、道徳などの授業を公開した後、村文化交流センターぶなの木でシンポジウムを開催。村内外から約80人が参加する中、大学学長や文部科学省、高校教諭などをパネリストに迎え「小規模校だからできる、自己肯定感を育てる教育」について意見交換した。
小中学校でモジュール授業を見学したミュージカルプログラムの総合演出を手掛ける韓朱仙(ハンチュソン)さんは「テンポ良く声がそろい、一丸となれる雰囲気が伝わった」と評価する一方、「個性は出せるのか」と指摘。他のパネリストたちも「心の中にあることを自分の言葉で伝えることも大事」と、今後に期待を込めてアドバイスした。
千葉敬愛短期大学の明石要一学長は「食べっぷり、遊びっぷり、付き合いっぷりが悪く、行動範囲が狭い。もっと多くの人と出会うことが大切」と個性の希薄さを懸念。村に通い始めて2年目になる花まる学習会講師の新井征太郎さんは「山村留学やIターン者が入ることで新しいコミュニティーが生まれている」と述べた。
文科省初等中等教育局財務課の鈴木文孝課長補佐は「目的を自ら見出す、協働し合いながら折り合いをつける。この人工知能には不可能な力を身に付けてほしい」と呼び掛けた。
会場に訪れた子育て中の母親から「頑張っても都会にはもっとすごい子がたくさんいると思うと、子どもを素直に褒めることができない」などの悩みを受け、神奈川県立川崎工科高校の小谷英次郎教諭は「それも深い愛情の一つ。叱っても良い。自己肯定感を育てるのは人の愛情」と助言した。
清水秀樹村長は「強く元気な子どもが育つよう工夫を重ねる。小規模だからこそできる見守る環境を整えたい」と述べた。