阿南町は1日、愛知東邦大学(名古屋市)、修文大学(一宮市)と、それぞれに包括連携協定を結んだ。町長が推薦する阿南高校生を大学が受け入れ、町内でのインターンシップなどを経て、卒業後は町内で就職するプログラムを構築し、若者の地元定着、地域の発展に寄与する人材の育成を目指す。
愛知東邦大学では2016年に沖縄県読谷村と同様の包括連携協定を結び、この春、協定に基く初の村長推薦学生が卒業し、地元企業に就職した。県外の自治体との包括連携協定は同町が2例目。
同大学は売木村に合宿施設を有し、長く同村との交流を続けており、交流が同町に広がる中、若者の流出による人材不足を課題に挙げる町の現状に、同大学の榊直樹理事長が連携を提案した。榊理事長は、特に医療、福祉従事者の確保に不安を抱く町の声に、同分野の専門人材を育成する修文大学との連携も橋渡しした。
修文大学との協定では、将来、町内の医療機関などに従事することを志す学生を阿南高校が町長に推薦し、町長面接を経て同大学に推薦する。町の医療職修学資金貸与事業を活用することで、安定的に地域医療の担い手の育成、確保を図る。
同大学が県外の自治体と包括連携協定を結ぶのは初めて。丹羽利充学長は「地域に必要な人材の育成を通じた社会貢献を運営方針に掲げており、まさに合致する取り組み。積極的に学生を受け入れ、看護師、保健師、臨床検査技師などの資格を取得し、地元で活躍できる人材を育成していきたい」と話した。
各大学で開いた調印式には、勝野一成町長、勝又司町教育長、浅井真也阿南高校校長、宮島久男同校同窓会長らが出席した。勝野町長は「高校を卒業後、地元で育った人の多くが地域外に出ていってしまう現状がある。大学での学びや地元でのインターンシップなどを通じて心身を磨き上げた学生が地元に戻ってくることは非常に重要なこと」とし、両大学の理解と協力に感謝した。
卒業する学生のうち就職と進学がほぼ半数という阿南高の浅井校長は「ずっと中から地域を支える視点と、一度地域を出て外から客観的に地域を見つめる視点の両輪が地域の発展には必要。町と大学の連携により、仕組みとして外からの視点を持つ学生を育成していただけるのはありがたい」と、新たな取り組みを歓迎した。
協定締結のきっかけとなった愛知東邦大学の榊理事長は「1人、2人といった小さな事業からのスタートだが、まずは実績を残すことが大切。大学で学んだ若者を町に迎え、社会人として育てていく土壌をしっかりと整えてほしい」と話した。
◎写真説明:愛知東邦大学で開いた調印式