信州大(本部・松本市)が開設を検討している新学部の誘致を巡り、南信州広域連合などは22日、誘致活動を促進する「誘致推進協議会」(仮称)の設立発起人会を立ち上げた。年明けにも設立総会を開く予定。地域住民、産業界、金融機関、行政が一丸となって進めていく考えで、連合長の佐藤健飯田市長は単なる誘致活動にとどまらず「大学生や教授らが『来たい』『住みたい』と思える街をつくっていくことが最終的な使命」と決意を述べた。
地元経済団体など28団体が新学部誘致に関する要望書を佐藤連合長に提出したのを受け、佐藤連合長は推進協議会設立に向けて「発起人会を立ち上げたい」と提案。出席者の拍手で賛同を得た。
要望書では、リニア時代を見据えた地域づくりの中核に大学の設立を据え、飯田下伊那地域への誘致活動を官民一体となって推進するよう求めた。
要望団体を代表し、飯田商工会議所の原勉会頭は千載一隅の好機と捉え「地域の総力を挙げて誘致活動に取り組み、地域の熱意を伝え、何としても新学部の設置を実現しなければならない」と訴えた。
飯田下伊那地域には4年制大学がなく、若者の7割ほどが高校卒業時に地域を離れ、将来的にも4割しか戻ってこない。発起人会設立に向けた意見交換で、県商工会連合会南信州支部の堀政則支部長は現状を指摘した上で「この地域で生まれ育った人たちがここで学び、就職できるような環境づくりが必要」と語った。
推進協の設立に向けては幹事会を組織して事務局体制を整える。構成団体は趣旨に賛同する市町村と議会、経済団体、市民団体、企業、個人などを想定する。
佐藤連合長は、リニア時代のまちづくりの視点として「都市重心」「人口重心」「交流重心」の3つの重心を意識したまちづくりを基本に据える。うちリニア駅を含む交流重心では、ゼロカーボンシティモデルのほかグリーンインフラ、サテライトオフィス、2地域居住など新しいテーマを実装することを想定。大学が加わることで「リニア時代のまちづくりの中核になる」とみた。
新学部を飯田下伊那地域へ設置する信大のメリットとして、リニア開業による首都圏や中京圏、関西圏へのアクセス向上を挙げ、3大都市圏に最も近い信大の学部になると指摘した。また教授らの往来が容易になることで特色ある講義が可能となり、学会の開催でも適地になるとも。地域の基幹産業の精密機械工業や航空宇宙産業と結び付いた研究の発展にも期待した。
信大が開設を検討している新学部の誘致を巡っては、長野市も誘致に名乗りを上げている。佐藤連合長は「(長野市との)誘致合戦を派手に繰り広げるつもりはあまりない」との認識で、リニア駅近くに新学部を置くことによるメリットをアピールする姿勢を強調している。
10月に就任した信大の中村宗一郎学長は「新学部の検討は前学長の時から話があり、いろんな角度で議論されている」といい、6年間の任期の中で形になるよう努力する考えを示している。
◎写真説明:官民一体の誘致を要望する関係者