歴史を将来に伝えたい

学校・教育

[ 2020年 8月 14日 金曜日 13時37分 ]

 松川高校ボランティア部は11日、県内唯一の731部隊(関東軍防疫給水部)の語り部、清水英男さん(90)=上伊那郡宮田村=を招き、体験を聞いた。満蒙開拓の歴史学習を重ねる部員にとっても、同時期の中国東北部で人体実験を行ったとされる極秘部隊について知るのは初めて。壮絶な体験に眉をひそめながらも「自分の心にとどめるだけでなく伝えていかなければ」と決意を固めていた。

 同部は、2018年の信州総文祭をきっかけに満蒙開拓の歴史を学び、阿智村の平和記念館で展示解説するボランティア活動を続けてきた。現在は、新型コロナウイルスの影響で、館内でのガイドはできないが、同館から語り部の証言映像を借り受け、文字おこしする活動を展開している。

 戦争体験者が高齢となる中、戦後75年の機会に存命中の体験者から直接話を聞こうと企画した。17日には、河野村開拓団集団自決の生き残り久保田諫さんも招く。

 清水さんは「若い人に話を聞いてもらいたい」と自ら運転して同校を訪れた。14歳の時、学校の先生の推薦で内容を全く知らされないまま同部隊の見習い技術員として採用されたという。同期34人のうち11人は伊那谷出身者だった。

 清水さんら3人は実習室に配属され、病原菌の基礎知識を勉強をしたが、筆記は一切許されず暗記して覚えた。現地住民の生活状況を調査し、水質検査を行ったこともある。他班の様子は極秘で、同期生が何をしていたか知らされなかった。

 清水さんはある日、標本室に連れていかれた。そこには人体のホルマリン漬けがずらりと並んでいた。薬品臭とショックで目も開けられないほど。夜も夢でうなされた。

 同部隊では捕虜をマルタ(丸太)と呼び「人ではなく物のように扱った」。お腹に子どもがいる女性の標本もあったという。「子どもの命を助けるために生体実験に応じたけれど、結局、子どもも殺されてしまったのだろう」と振り返った。

 捕虜だけでなく少年技術員が実験体になることも。病原体が入ったパンを食べさせられ、症状を経過観察された。生きたまま解剖された友人もいた。

 ソ連参戦後、証拠隠滅のため、生体実験用捕虜が殺害・焼却された。清水さんは命令を受けて骨を拾ったが「20~30人分はあった」という。その後、特別監獄内に砲弾を敷き詰め、砲兵が爆破した。

 帰国後は▽軍歴を隠す▽公職に就かない▽隊員相互の連絡を取らない―などを誓わされた。軍歴資格の証拠焼却により給料も手当てもなく、その後の暮らしに苦労した。

 部隊の幹部は研究成果を材料に米国と取り引きし戦犯を逃れ、戦後も大学などで要職を務めた。一方、何も知らされなかった下級技術員で戦犯として処刑された人もいた。

 「あのまま実習室にいたら私も生体実験に携わっていたかもしれない。標本室のホルマリン漬けが忘れられない」と清水さん。「今の政権は戦争を全く反省していない。圧力で対抗すれば戦争が始まる。より難しい時代になったが、若い皆さんで考えてほしい」と訴えた。

 満蒙開拓平和記念館の展示ガイドでソ連侵攻時を担当した3年の男子生徒(18)は「731部隊に興味があったが、想像以上に過酷。満蒙開拓の裏でこんなことがあったと初めて知った。自分の心に留めるだけでなく、将来に伝えていかないといけない」と話した。

 同部顧問の菅沼節子教諭は、部員に対して「戦後100年になった時、皆さんは40代になる。自分たちがつないだことを子どもたちに伝えてほしい」と呼び掛けていた。

◎写真説明:清水さんから体験を聞く松高ボラ部

  

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