宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所の石井信明さん(59)が9日、村老人福祉センターで開いた天龍小・中学校のPTA講演会に講師として訪れた。石井さんの義母が村出身の縁で実現。石井さんは2015年に金星探査機「あかつき」の金星周回軌道投入までの挑戦について語り、児童や生徒、一般ら約60人が注意深く耳を傾けた。
石井さんは地球と兄弟星とされ、地表温度が約460度もある金星について解説。「生まれたときは地球と同じだった灼熱の惑星は太古の地球なのか、未来の地球なのか」と子供たちに問い掛け、「地球も温暖化が進んでいるが、金星が地球の未来の姿ならば、我々は今から何かをしなければならない」と警鐘を鳴らした。
また2010年に種子島宇宙センターから打ち上げられたあかつきは、金星の周回軌道に入る予定だったもののメインエンジンの故障で失敗し、さまざまな問題を解決して5年後の再挑戦で成功した。石井さんは「打ち上げから2026日掛かったが、再投入を試みたエンジンの噴射開始からの20分間、1秒1秒数えた時間のほうが長く感じた」と振り返った。
最後に、石井さんが10歳、小学5年生のときの70年、日本初の人工衛星「おおすみ」の打ち上げが、宇宙やロケットを夢見るきっかけになったと語り、「敗北とはあきらめること。失敗しても敗北ではない」と子供たちにアドバイスした。
5年生の児童(11)は「金星がとても暑いことに驚いた。知らない話を聞くことは面白い」と目を輝かせた。