立ち止まらない二人 年間取材総括 コロナ禍とGLIM SPANKY

グリムスパンキー

[ 2021年 12月 29日 水曜日 21時18分 ]

【企画・取材・文=仲井勇司】

 毎月第3日曜日の本紙3面で「グリムスパンキーニュース」という連載を担当している。豊丘村出身の松尾レミさん、飯田市座光寺出身の亀本寛貴さんによるロックユニットGLIM SPANKY(グリムスパンキー)を以前から取材しているが、連載が始まり、ことしはひんぱんにオンライン取材を行った。年末にあたり、一年の取材を総括する雑感として本稿を寄せる。(以下敬称略)

10月22日から12月7日にかけて行った約2年ぶりの全国コンサートツアーで演奏するGLIM SPANKYの松尾レミと亀本寛貴(撮影=上飯坂一)

 二人を取材する時間は楽しい。音楽が好きで、演奏者だった経験もある筆者にとってはアーティスト二人の志の高さと向き合う緊張感は心地よく、また身が引き締まりもする。

 「一番求められているものは魂の部分。それは強く、意志のあるメッセージが歌詞に込められているということだと思う」(松尾)

 「僕らはギタリストとボーカルだから、楽曲には当然ギター演奏を生かさなくちゃいけない。でも、大事なのは(ギターが入っているかどうかよりも)一曲一曲がポップスとして強いかどうかということ。その曲にギターの音が本当に必要なのかということさえ疑いながら曲を作っている」(亀本)

 約1年前、5作目のフルアルバムが発売された時に聞いた二人の言葉だ。ブルース色の強い正統派ロックユニットとして売れてきたグリムスパンキーだが、ボーカルの松尾が歌詞へのこだわりを貫く一方、ギター兼プロデューサーの亀本はアレンジの妙に重点を置き始めた。自分たちの作った新しい曲が聞き手にどう伝わるか。ロックを軸に、広く親しまれるポピュラー音楽を届けるアーティストになるには―。取材のたび、二人の向上心を目の当たりにしてきた。

 一方で、二人はインタビュー中にお互いの意見や見解をめぐって、質問した筆者そっちのけで言い合いを始めたりすることもある。筆者が「まあ、まあ」と口を挟むような時さえあるが、もちろん二人はけんかを始めたわけではない。必要とあらば、いつでもお互いの音楽観についての確認を遠慮なく行うのだ。といって、地元のおっさんインタビュアーの質問を適当にやり過ごしているふうでもない。考えや心境を正確に伝えようとしてくれる。その真面目さにこちらも必死についていっている。

フジロックフェスティバル’21最終日の目玉企画として行われた「忌野清志郎ROCK’NROLLFOREVER」終了後の出演者たち。ステージ上で大きく手を振るのが亀本寛貴(右から7番目)、その左が松尾レミ=8月22日、同フェス公式YouTubeチャンネルが配信したライブ映像のスクリーンショット

 グリムスパンキーにとって、ここ2年に及ぶコロナ禍との戦いのハイライトは8月20~22日に開催された国内最大級の野外音楽イベント、フジロックフェスティバル’21(新潟県湯沢町)への出演だった。20年のフジロックは開催中止となったが、ことしはあらゆる感染防止策を講じながら開催されることが早くから決定。グリムスパンキーも最終日の企画ライブにゲスト出演者として名を連ねていた。

 そこをコロナ「第5波」が襲った。直前の18日からは連続4日間、東京都だけで1日の新規感染者数がそれぞれ5千人を突破。全国的にも最悪といえるタイミングでフジロックが始まることに、SNSやインターネットメディアでは同会場内での感染拡大を危惧する声や報道があふれかえった。

 動画配信サイトYou Tube(ユーチューブ)の同フェス公式チャンネルを通じて3日間の様子は生配信された。野外とはいえ多数の入場者の姿が映し出されていた。誰もがマスクを着用し、規律が乱れている様子はない。ただ、本当に大丈夫なのか。ロックフェスという熱気あふれる空間で全員がマスクを着けたまま、長時間おとなしく聞き続けていられるのか。自分なら無理ではないか。空中をホタルのように飛び交っているかもしれないウイルスの飛沫を思い、筆者は戦慄さえ覚えた。

 しかし、それは杞憂だった。主催者は8月24日、3日間で延べ3万5千人余りが来場し、開催期間中に一人の陽性者も確認されなかったことを公式発表した。グリムスパンキーももちろん無事だった。筆者の取材に松尾は「会場内でマスクを外してる人なんて一人も見かけなかった」と振り返り、亀本は「音楽イベントにこそ感染予防意識の高い人たちが集まっているように思う」と語った。当時、現地を取材した朝日新聞の記者が「主催者側の感染対策は万全」と評価する観客の声を伝えたこともよく知られている。

 主催者がわずか2日後に「陽性者なし」と結論づけて声明を出したのは早過ぎたという批判はあった。どれだけ予防策を講じたとしても感染リスクを伴って開催されたことは否めない。ただ、無事に終えるという覚悟を持った人たちがことしのフジロックを作り出したことも事実。松尾はそれを「みんな人生を賭けて参加していた。その現場にいられて良かった」と語った。筆者は配信映像を眺めただけで会場内のカオス(=無秩序)を思い込んだ自分の無神経さを恥じた。

 二人は松川高校在学中からのバンド仲間。当時、生徒会活動でも正副会長を務めた者同士という盟友であり、地道なライブ活動の苦楽を共にしてきた戦友でもある。松尾の才能を信じた1学年上の亀本は、日本大学芸術学部へ進学した松尾とともに関東圏で活動するため、いったん入学した愛知学院大学から獨協大学(埼玉県)を受験し直して合格。進学先を変更する決意までして松尾との音楽活動を継続させ、いまに至る。

 その絆の強さを目の当たりにするにつけ、筆者は英国出身の世界的バンド、ザ・ローリングストーンズのミック・ジャガーとキース・リチャーズが幼なじみであることや、アイルランドが誇るU2(ユーツー)のバンドメンバー全員が高校時代からの親友同士であるというエピソードを思い出し、胸が熱くなる。

 一度はビジネスが止まった音楽業界。迷いや落胆があっても仕方なかったような困難な時期を、グリムスパンキーはしたたかに乗り越えつつあると思う。二人が挑み始めている「新しい音楽性」についても詳しく紹介したかったが、残念ながら今回は稿が尽きた。立ち止まらない二人の成長をこれからも見つめ続けたい。

【編集者=飯田市上村出身】

  

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