メンタルを鍛え演奏技術も向上。
「強み」を確信した2021年!
【取材・文 仲井勇司】
全国7都市・8会場を回った2年ぶりのライブツアーなどを成功させて2021年の演奏活動を締めくくった飯田下伊那地域出身のロックユニットGLIM SPANKY(グリムスパンキー=松尾レミ&亀本寛貴)。8月にはフジロックフェスティバル’21(新潟県湯沢町)への出演も無事に果たすなど、次第に2年前までの活動ペースを取り戻しつつあります。「一年を振り返る」をテーマに松尾さん、亀本さんに年末の思いを聞きました。
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〈嬉しかったこと〉
松尾 2年ぶりに全国ライブツアーを行えたこと。これに勝るものはないです。
亀本 同感です。

約2年ぶりに全国ライブツアーを行ったGLIM SPANKY(撮影=上飯坂一)
〈残念だったこと〉
松尾 なかなか実家に帰れないことですね。以前はふらっと帰って曲を作ったりもしてたのに。気持ち的にかなり苦しいです。
亀本 コロナ禍が長引いて海外アーティストが来日できなくなり、海外の素晴らしい音楽に生で触れられる機会がなくなってしまった。洋楽のカルチャーが日本では衰退していってしまうんじゃないかと心配しています。
〈手応えを感じたこと〉
松尾 毎週放送しているラジオ番組(水曜17時5分=FM長野)や公式ファンクラブで始めたBBS(インターネット掲示板)にたくさん反響をいただいて、ファンの方の思いがよりリアルに感じられるようになった。めちゃめちゃ励まされてます!
亀本 演奏が上手くなったという手応えがありますね。ライブを行うたびに演奏の様子が収録され、インターネットでアーカイブ配信されるようになった。もはやライブでも“勢い一発”ではなく、後々に聞いて恥ずかしくない演奏をしないといけない。すごく集中して演奏するようになった結果、上達したなと。
〈失敗したこと〉
松尾 ステージに上がる前にやる声出しとかストレッチとか、自分流のルーティン(習慣)があったのにコロナ禍の影響でそれを一時、忘れてしまっていた。改めてルーティンを一から自分の体に叩き込んでツアーを回りました。
亀本 正直、小さな演奏ミスとか以外、活動の中で失敗したと思うことはあまりないんですよ…。「自分で決めてやったことは全部正解!」ってことにしちゃってるだけかもしれないですけど。
―プラス思考でいなければ前に進んでいけない?
亀本 そうですね。本当にそうです。
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〈コロナ禍〉
松尾 自分のメンタル(精神面)をどうコントロールするかが勝負でした。都会で、部屋に一人ずっとこもっていると本当に心が病みそうになる。だから(気晴らしに)ハンモックを買ってみたり、料理を作りまくったりして自分の機嫌を自分でとっていました。自己管理力が上がったようにも思います。
〈フジロック出演〉
―8月の「コロナ第5波」のさなか、賛否両論の渦中で開催されたフジロック’21に予定通り出演しました。
松尾 いろいろな意見があったけど開催されて本当に良かった。スタッフ、ミュージシャン、お客さん。感染防止の覚悟を決めてみんなが臨んだ現場に私たちもいられたことにすごく意義を感じました。会場内でマスク外してる人なんて私、一人も見かけなかったし。
亀本 音楽イベントにこそ、感染予防意識の高い人たちが集まっているように感じますね。
〈コラボ活動〉
―カバー(名曲の再演)企画の作品集に参加したり、ほかの歌手へ楽曲を提供したりと、オリジナル曲の発表よりも外部とのコラボレーション(協業)が多かった印象ですが。
松尾 立て続けに仕事の依頼をいただいて、全部受けていたら自然にそうなっていたというか…。
亀本 自分たちよりも多くのリスナー(聞き手)を持っているアーティストや、グリムの作った音楽をより多くの人に届けてくれそうな方から依頼をいただけた。そういう仕事を受けることが自分の作曲能力を高めてくれるとも思った。成長できそうな機会は逃さないぞ!という気持ちで取り組んできました。
―その成果は。
亀本 「自分たちの音楽には絶対的な強みがある」という感触を得られたこと。その強みに何を加えていくのか、いま模索しています。
〈22年の目標〉
松尾 来年はフルアルバムをまた出せる。必ず良いアルバムを生み出すという覚悟です。
亀本 楽曲提供で培ったものをオリジナル曲で形にできる。それが楽しみです!
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コロナ禍による制約の中で、音楽家が置かれている立場や自身の可能性について真摯(しんし)に向き合ってきたグリムスパンキー。折に触れて松尾さん、亀本さんの心境や考え方を聞いてきた筆者の取材雑記を近日、別欄に寄稿します。
【毎月第3日曜日掲載】