
“ウイスキーが、お好きでしょ” サントリー「角瓶」CMで歌ってます
【取材・文:仲井勇司、illustration:Remi Matsuo】
前回に予告した飯田下伊那地域出身のロックユニットGLIM SPANKY(グリムスパンキー=松尾レミ&亀本寛貴)によるサントリーウイスキー「角瓶」のテレビCMオンエア情報。バー店内に女優の井川遥さんらが登場する同最新CMはグリムスパンキーが歌唱・演奏する「ウイスキーが、お好きでしょ」のフレーズに乗って4月下旬から全国展開で放送中。「music by GLIM SPANKY」の画面クレジット(紹介字幕)も表示されており、グリムの存在感が大きく伝わるCM内容となっています。

CM曲を担当したサントリーウイスキー「角瓶」の広告イメージ(サントリー宣伝部提供)
角瓶は国内で最も販売量が多いウイスキーの老舗ブランド。また同CMで流れる楽曲「ウイスキーが、~」は1991年に発売された石川さゆりさんのオリジナル曲で、07年からは角瓶のCM曲としてゴスペラーズ、竹内まりや、EXILE ATSUSHI(エグザイル アツシ)、ハナレグミら実力派歌手に歌い継がれてきたウイスキーCMの代表格ともいえる名曲です。
そうした背景を持つ同曲を新たにグリムスパンキーが担当。グリム流のアレンジでレコーディングしたカバー曲として4月下旬から配信販売も行っています。松尾さんのやや乾いたトーンの歌唱に亀本さんの艶やかなギター演奏とサウンドアレンジ。ムーディーで若々しさも漂うモダンな仕上がりになっています。
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「このCMに自分たちが決まったという喜びと、自分にもうまくできるのかというドキドキと、このCMをすごくやりたかったという思いと」
松尾さんは実感を込めてレコーディングを振り返ります。というのも今回の仕事はオファー(依頼)を受けたのではなく、CM制作の公募にグリムスパンキーがエントリー(応募)して採用されたという経緯で成立しました。つまり競合相手もいた中で『グリムスパンキーにお願いしたい』という結果が得られた…という流れ。松尾さんが語る通り、喜びもひとしおだったことでしょう。
亀本さんも「長いオンエアの歴史と一貫したコンセプトがあるCM。選ばれたことを名誉に感じますし、僕らのブランディング的にもすごく大きい」と率直に喜びを口にします。実際、大手芸能事務所の広告キャスティング担当者らに尋ねると「広告主の格付けでサントリーは常に最高ランク」との答えが。今回つかんだ広告タイアップはグリムにとって大きな実績につながっていきそうです。

松尾さんがツイッターに投稿したイラスト(右)とカバー曲「ウイスキーが、お好きでしょ」の配信用ジャケット(左)。「意外にビンが重い」などの言葉も添えながら自らジャケット写真を撮影した様子を漫画風に描いた
放送中の同CMは角瓶のハイボール(炭酸水割り)のつまみに唐揚げを合わせる“ハイ&カラ”(=ハイカラ)がキャッチフレーズ。制作にあたっては松尾さんに「(ハイカラつながりで)カラッとした雰囲気で歌ってほしい」「技巧派というよりロックテイストで」という要望が出され、松尾さんは「石川さゆりさんをリスペクトしつつ、もう少し軽快に歌おう」と意識したそうです。
ギター演奏と楽曲アレンジを担当した亀本さんは「原曲のコード進行はジャズ寄りで大人っぽいが、今っぽさやフレッシュな感触も出したい」と考えて全体像を再考。「例えばリズムのループをLo‐Fi(ローファイ=低音質)なヒップホップのイメージで打ち込みつつ、ギターは自分らしい素直なブルース感で弾く」など細部に新しさを追求しました。
また松尾さんが配信用ジャケット写真をスマートフォンで“自撮り”し、イラストに描いてツイッターへ投稿していたことも印象的。角瓶とスマホを握りしめたユーモラスな絵からもこの仕事への満足感が伝わってきます。
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二人ともウイスキーは大好きで日頃からよく飲むのだそう。亀本さんのみならず、歌手として喉を大事にしている松尾さんもウイスキー愛飲家とは意外ですが、「私はビールが飲めないぶん、ウイスキーをハイボールで飲みます。ほかにも焼酎、泡盛、紹興酒、日本酒…」と松尾さん。また酒のつまみの嗜好も尋ねたところ、「しめさば、梅干し、塩辛、ホタルイカの沖漬け…。ホタルイカは干物を炙(あぶ)りながら食べるのも大好き!」と、むしろ酒豪感たっぷりのコメント。角瓶CMがグリムスパンキーにとっていかに相性の良い仕事だったのかを実感する取材となりました。