グリムスパンキー ニュース 2022.06.19.

グリムスパンキー

[ 2022年 6月 19日 日曜日 16時46分 ]

美しき新曲「形ないもの」は1曲の中に3曲分の情報量!

【取材・文:仲井勇司、illustration:Remi Matsuo】

 自身6作目となる最新アルバム「Into The Time Hole」の発売(8月3日)と、それにともなう全国コンサートツアーの開催(11~12月=全11回)を発表した飯田下伊那地域出身のロックユニットGLIM SPANKY(グリムスパンキー=松尾レミ&亀本寛貴)。アルバム制作が佳境に入る中、収録予定曲の中から新曲「形ないもの」がまず先行配信で発売されました。

 同曲は5月20、28日に「野音ライブ2022」と題して行われた大阪城音楽堂、日比谷公園大音楽堂(東京)の両公演でいち早く来場者に向けて初披露。フジロックフェスティバル(新潟県)など「夏フェス」出演予定も次々に発表されており、グリムスパンキーが多忙なスケジュールの中で活動している様子がうかがえます。

日比谷「野音」で5年ぶりに単独コンサートを開催

入場制限が緩和され客席がぎっしり埋まった (ともに5月28日、東京・日比谷公園大音楽堂/撮影=上飯坂一)

 新曲「形ないもの」は、次第に大きく変化していく楽曲構成がとても特徴的。松尾さんが弾き語りで歌う序盤でチェロ伴奏が重なり、やがてマーチングドラムとともにサビ部分へ展開。間奏ではトランペットが高らかに鳴り響き、さらに転調して一段とギアを上げると、最後は亀本さんのスケール感あふれるギターソロへ…。1曲の中で幾重にも重なっていく音の仕掛けは二人の曲作りの新境地を示しているかのようです。

 歌詞に美しい季節感がつづられた一方、「形ないもの」という曲名には謎めいた趣も。聞きどころ満載の同曲について作曲背景を伺いました。

 歌の最後で一度だけ“形ないもの”という言葉が出てくる歌詞について尋ねると、松尾さんは「全部聞き終わった後に『なるほど』と思えるものにしたかった」と説明。コロナ禍と戦ってきた全ての人々へのエールであるとも言及しました。

 SNSに書き込まれた若い世代からのメッセージもヒントになっているそうです。

 「卒業式や入学式、修学旅行などの中止を残念がるコメントを読むことがよくありました。私自身、好きだったライブ会場が閉店したりして喪失感を抱いていた。でも、そういう感情を抱えたまま、いったいこの先どうするのか。卒業式やライブ会場のようには目に見えないけれど、自分の内側にある、形はないけれど一番大事なものに目を向けなきゃいけないんじゃないか―。そういう思いにかられて、この曲を書き上げました」

新曲「形ないもの」の配信用ジャケット。懐かしい「ドーナツ盤」のレコードのイメージでデザインされている

 ファンの気持ちもくみ取りながら作詞作曲した松尾さん。その原曲をグリムスパンキーのバンド楽曲に仕上げていくのは亀本さんの仕事。どんな発想からこの壮大な新曲が生まれたのか。亀本さんはこう説明しました。

 「作曲の仕方ってどんどん凝ってきていて、いまは一つのアイデアで1曲作り上げる時代ではなくなったという感じ。1曲に従来の3曲分くらいのアイデアが詰まっていないとエンターテインメントとして通用しない時代というか」

 その「時代」性とは、エンタメ業界全体に漂うものであるとも指摘。

 「(社会現象化したアニメーション大作である)新世紀エヴァンゲリオンの作者、庵野秀明監督が『最近は起伏がないとみんなすぐに飽きてしまう。とにかく起伏に富むことが大事』という話を何かでなさっていて、確かにそうだなと。僕もエヴァの完結編や、その他の映像作品を見ていて起伏の激しさ・テンポの速さを感じます。それはアニメに限らず、いまの日本のポップス全体にも当てはまる傾向」とし、さらに「大ヒットした“鬼滅の刃”の主題歌「炎(ほむら)」などはまさに3曲分ぐらいの情報量。ほかにもオフィシャル髭(ひげ)ダンディズムとかキング・ヌー、…売れてるバンドの楽曲全般に共通している特徴」と分析。

 そうした時代の流れをくみ取り、「意図した訳ではないけど、自分もそういう仕事をしたのかな」と振り返りました。

 尻上がりに高揚感が増す同曲を味わいながら「どことなくビートルズの風情も?」…と感じていると、その謎解きを松尾さんがひと言で表現してくれました。

 「今回のカメ(亀本さん)のアレンジで、私はトランペットのフレーズが気に入ってます。この曲には(トランペットの間奏で知られる)ビートルズの『PENNEY LANE』のイメージがあったから、すごく良い!」

 …やはりビートルズ。グリムスパンキーの曲作りは最上級のポピュラー音楽を目指して進化を続けていくようです。

  

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