
飯田市内のバー、伊那八幡駅… 正月の帰省で英気を養いました
【取材・文:仲井勇司、illustration:Remi Matsuo】
全国各地をワンマンコンサートで回る「Into The Time Hole Tour 2022」を12月21日に終了。年明けは活動拠点の東京を離れ、それぞれの実家で正月を過ごしたという飯田下伊那地域出身のロックユニットGLIM SPANKY(グリムスパンキー=松尾レミ&亀本寛貴)。
年末年始も楽曲制作の仕事は続いたそうですが、それぞれのスケジュールで帰省し、地元の空気で英気を養ったようです。どのような正月を過ごしていたのでしょうか。

コンサートツアー最終日の演奏を終えて客席に手を振る=12月21日、東京・昭和女子大学人見記念講堂(撮影=上飯坂一)
松尾さんは「母親が作った雑煮を食べ、両親と岐阜県へ遊びに行き、地元豊丘村の友人たちとも焼き肉で会食し…」と三が日を振り返った上で、グリムスパンキーにとっての思い出の場所であるJR飯田線の伊那八幡駅を訪れたことも紹介。実は松尾さんは高校時代、同駅で下車してはバンドの練習場所にしていた飯田市松尾にある“スタジオ”に通っていました。
「松尾のグラウンド(飯田市総合運動場)のすぐとなりに昔カラオケボックスだった建物があり、そこが音楽スタジオとして使えるようになっていて、ずっと通っていました」(松尾さん)
1カ月ごとに家賃のような料金を支払い、カラオケの機械が撤去されただけの空き部屋に楽器を持ち込んで行った練習。外への音漏れを気にしなくていい自由な空間―。グリムスパンキーを結成し、ひたすらバンド活動に打ち込んでいた高校時代を松尾さんはそう懐かしみます。
「ほぼ毎日通ってましたね。カメ(亀本さん)もサッカーの部活が終わってからやって来て」

JR飯田線の伊那八幡駅に立つ松尾さん
当時、松尾さんの父親の友人にそのスタジオをギターの練習場所として使っていた人物がおり、その縁で松尾さんも利用するようになったのだそう。バンド演奏は時に騒音と受け止められることもあり、音が漏れない練習場所の確保はバンドマンにとって大きな課題です。
「いま考えると、良い場所があったものだと思います」
懐かしいバンド練習の記憶につながる伊那八幡駅は、母校の松川高校(下伊那郡松川町)や豊丘村の自宅とは一味違う思い出の場所であるようです。
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亀本さんは飯田市内の「あるバー」へ飲みに行ったそう。酒好きな男友達と再会し、さぞかしにぎやかに飲み明かしたのでは…と尋ねると、意外にも「いえ、両親と飲みに行きました」と亀本さん。
父親母親と連れ立ってバーへ飲みに行くとはなかなか粋な親子関係ですが、その日は鉄板焼きで知られる飯田市鼎・水の手の店で“鉄板焼きの焼き肉”を家族で楽しんだ後、そのまま中央通り1丁目角にある有名バーへ。
以前から「ウイスキーが好き」と話し、米国産ウイスキーの一種「バーボン」にこだわる亀本さん。「古き良きアメリカがテーマの店でバーボンの種類が充実している」という評判を聞いてそのバーを訪ねたそうです。
飲んでみた銘柄は「ノブ・クリーク」や、グラミー賞やノーベル文学賞も受賞した著名な米国フォーク歌手ボブ・ディランがプロデュースしたことで知られる「ヘブンズ・ドア」など。そうしたウイスキーにまつわるエピソードを亀本さんが語ると、松尾さんも「面白いな!」と、そのバーの存在に対して興味津々に。
以前から帰省は別行動で、移動予定などを特に伝え合ったりもしない松尾さんと亀本さんだけに、今回の取材はお互いの正月の様子を聞き合う良い機会にもなったようです。

飯田市中央通りのバーでくつろぐ亀本さん
また松尾さんは「去年より本をたくさん読みたい」という新年の抱負も表明。本好きな松尾さんに最近読んだ中で気に入った本を尋ねると「コジコジにきいてみた。モヤモヤ問答集」(さくらももこ著)と短編小説集「月とコーヒー」(吉田篤弘著)の2冊を挙げ、「悩んだ時にそっと肩を押してくれたり、一息つかせたりしてくれる本だった」と紹介してくれました。
さらに「今年はバンド形式でのライブを多くやりたい」とも。「去年は2人か3人の小編成でのアコーステッィク演奏のほうが多かったので」と松尾さんが活動拡大に意欲を示すと、亀本さんも1年後に思いをはせて「イベントやテレビに出演してるようなにぎやかな年末年始に」と実感を吐露。
「そういう状況は活動の結果としてついてくるもの。目標として語る話ではないですけど」と前置きしつつも、「1年後の結果を僕は今からイメージしています」と言葉に力を込めました。