リニア開業を見据えたまちづくり講演会が28日、県飯田合同庁舎とオンラインで開催された。伊那谷で活動する移住者らが講演し、移住・定住を促進するための課題を探った。
リニア中央新幹線整備を地域振興に活かす伊那谷自治体会議とリニア中央新幹線建設促進長野県協議会の共催で年1回開催しており8回目。当初は1月開催を予定したが、コロナの影響で延期した。
冒頭、県信州暮らし推進課により県の移住施策の紹介があった。県内への移住者は昨年度2960人で前年度の2426人より大幅に増加した。
かつての移住の中心は定年退職後の世帯が多かったが、現在は20~40代の移住が増えている。一方、移住へのステップとなるつながり人口(関係人口)を増やすことが課題だとした。
講演では移住者ら5人がそれぞれの立場で地域の魅力や課題を提言。県地域おこし協力隊の杉山豊さんは「移住者を受け入れる体制づくりが必要」だとし、サポート役となる中間人材が必要と訴えた。
上伊那郡辰野町でシェアオフィス運営などさまざまな事業を手掛ける赤羽孝太さんは、自転車事業を紹介し「民間には市町村の枠がない。広域的に動くことができる」と語った。
グラフィックデザイナーで松川町の北林南さんは、音楽イベントやフリーペーパー発行、合同会社伊那谷サラウンド立ち上げの理念を語り、「市町村の枠を超えて地域づくりをデザインしたい」と語った。
飯田市上久堅に移住し農業を営む長谷川一矢さんは、魅力を感じて来る移住者に対してあらかじめデメリットも伝えておく必要があると助言。「移住はきっかけにすぎない。本当に大切なのは定住。若い人が出て行く地域ではなく、住んでいる人が本当にいいところだと感じる地域にしていくことが大事だ」と語った。
上久堅の協力隊員の地主健一さんは、移住者への聞き取りから「目的はさまざまだが、選んだ決め手は三遠南信道インターがあること。交通は重要な要素だ」と分析。リニア開業は、首都圏に仕事や実家がある人にとっては期待が大きい一方、地域住民にとっては現実味がなく温度差があるとした。「リニア開業が近づけば移住希望者はさらに増えるのでは」と期待した。
◎写真説明:リニアまちづくり講演会