下伊那北部5町村でつくる総合事務組合は24日、「リニアを見据えた北部5町村のまちづくりシンポジウム」を豊丘村で開き、昨年度から策定を進めてきた「リニアを見据えた北部まちづくり構想」を公表した。リニア開業を見据え、住んでいる人や訪れる人が「住んで楽しい、遊んで楽しい」地域づくりを構想のメインテーマに掲げ、2023年度から30年度までの計画期間中、実現に向けて5町村が連携して取り組む。
リニア開業により都市圏との交流が盛んになることが予想される中、交流を生かした地域の活性化や暮らしの向上を図るため、各町村単独では難しい事業を5町村が連携することで可能性を広げ、地域全体を盛り上げていこうと構想の策定に着手。若手職員による情報共有や中学・高校・大学生による座談会、理事者と経済界との懇談会、パブリックコメントの募集などを通じさまざまな声を集約して検討を進めてきた。
構想には社会基盤を中心に▽医療・福祉▽子育て・教育▽住まい・働く▽ゆとり・レジャー▽守っていくもの―の6つのテーマを設け、行政と民間企業が連携して取り組む。このうち社会基盤は、リニア県駅へのアクセス道路など道路ネットワークの整備、子育て・教育は大学や専門学校など高等教育機関の誘致、住まい・働くは移住者や交流人口の増加へ空き家を活用した住宅整備などを盛り込んだ。
シンポジウムでは、岐阜大学客員教授の加藤義人氏が「リニア時代の下伊那北部の未来」と題し講演した他、「リニア時代の下伊那北部5町村の未来をどう描くか」をテーマに、加藤氏と地域住民3人が公開討論を行った。
討論は「地域の魅力」や「構想のテーマを実現するために何をすれば良いのか」など、加藤氏の問いに応えていく形式で進めた。地域の魅力では、自然や景観、伝統文化、食などがあがる一方で「何気ない景色など地域住民にとっては当たり前過ぎて魅力に気付いていない」といった声もあった。
また、テーマの実現へすべきことでは「移住者にとって地域コミュニティーへの入口が分かりにくい。手引書のようなものがあるとより地域に溶け込みやすくなる」「住んでいる人たちが楽しそうなことが大切。楽しそうで笑顔のある場所に人は寄ってくる」「地域の魅力に気付き、発信する」などの声が。加藤氏は「『当たり前』の中に地域の魅力が埋もれている。移住者らの声を参考に掘り起こし、整理して発信していく必要がある。地域を離れて暮らす若者らに向けて、地域の将来像とともに伝えていっては」などとアドバイスした。
◎写真説明:シンポジウムの公開討論会