リニア中央新幹線計画を巡りJR東海は2日、大鹿村内で掘削を進めている南アルプストンネル長野工区(8・4キロ)のうち、釜沢―除山斜坑間の本坑と除山斜坑先から掘り進めている先進坑の切羽付近を報道公開した。県内でJRが工事現場を公開するのは初めて。工事の進捗状況や安全対策について説明した古谷佳久担当部長は、「地質は粘板岩で比較的安定しており、湧水量も少なく順調に掘削が進んでいる」と強調。2026年11月末までの掘削完了の見通しを維持した。
南アトンネルは長野、静岡、山梨をまたぐ全長25・5キロのトンネル。JRは県ごと3つの工区を設定しており、長野工区は2016年11月に着工。今年3月までに小渋川、釜沢、除山の非常口から本坑(本線トンネル)に接続する計3本の斜坑(作業用トンネル)と、小渋川―釜沢斜坑間の先進坑(調査用トンネル)の掘削が完了した。
除山斜坑先から品川方面へ掘削している先進坑(4940メートル)は、斜坑との交点から約290メートル掘り進んだ地点を公開。掘削断面積は約35平方メートルで、幅約7メートル高さ6メートル。土被りは約300メートル。長野県と静岡県の県境では土被りが最大で1440メートルになることから、古谷部長は「慎重に掘り進めていく」とした。
また、4940メートルのうち700メートルは県境を越えて静岡県に食い込むが「県境に到達するまでには4年ほどかかると思うが、それまでに説明を尽くしたいとした。
一方、本坑は小渋川―釜沢斜坑間(1650メートル)と、釜沢―除山斜坑間(1500)の2カ所から品川方面へ掘削しており、釜沢斜坑との交点から320メートル掘り進んだ地点を公開した。掘削断面積は約100平方メートルで、幅約13メートル、高さ8メートル、土被りは約280メートル。小渋川―釜沢斜坑間は全体の約2割の釜沢―除山斜坑間は1割未満の掘削が完了している。
いずれも山岳トンネル向きの「NATM(ナトム)工法」で掘削を実施。ダイナマイトでの発破、発生土の搬出、コンクリート吹き付けなどの工程を、地質が良ければ1日4回程度繰り返し、最大で4~5メートル掘り進めることができているとした。
安全対策では、豊丘村の伊那山地トンネル坂島工区や岐阜県中津川市の瀬戸トンネルで発生した崩落事故を踏まえ、ガイドライン順守の再徹底や安全設備の充実を図ったと強調。「地元の理解があって工事を進めさせていただいている。環境保全、地域との連携を重視し、安全を最優先に工事を行っていく」とした。
東側の山梨工区(7・7キロ)は着工済み。残る静岡工区(8・9キロ)の着工の見通しは立っていない。
◎写真説明:釜沢―除山斜坑間で掘削している本坑