JR東海は23日、大鹿村内で掘削しているリニア中央新幹線南アルプストンネル長野工区(8・4キロ)について、今月9日に釜沢非常口斜坑(作業用トンネル)先から品川方面に向けて本坑(本線トンネル)の掘削に着手したと発表した。同日夜に開かれた大鹿村リニア連絡協議会で明らかにした。
南アトンネルは長野、静岡、山梨をまたぐ全長25・5キロのトンネルで、NATM(ナトム)工法で掘る。JRは県ごと3つの工区を設定しており、長野工区は2016年11月に着工。ことし4月には先進坑の掘削を終えた小渋川―釜沢の斜坑間でも本坑掘削に着手し、現在は2カ所から品川方面に掘り進めている。
この日の連絡協ではJRや県などが工事の進捗状況を報告。JRは既に本坑掘削に着手している伊那山地トンネル青木川工区について、本坑延長約3600キロのうち約1割の掘削が完了したと伝えた。
難工事が予想される中央構造線部を安全に施工するため、本坑に平行する小さい断面の調査用トンネルを掘削することを検討しているとした。
トンネル掘削土の村外搬出を巡っては、観光シーズン中の10月と11月は土曜日を全て運休すると説明。期間中は平日の運行台数を1日片道30~50台ほど増やし、その分を中川村の半の沢発生土置き場に運ぶことで対応する。
一方、残土を搬入して下市田産業用地の整備を行っている高森町は、当初9月までを予定していた残土運搬期間を最大で12月まで延長すると報告した。予定よりも運搬車両の台数を確保することができず、予定期間内に造成工事を完了することが難しいとし、理解を求めた。
10月からは駒ケ根市への残土運搬が始まるが、JRは「日程を調整し、全体での運行台数は増えないようにする」との方針を示した。
この他、大鹿村が残土を活用して鳶ケ巣沢の小渋川左岸で行う環境対策事業について、追加の地質調査や学識経験者の助言を踏まえた盛土構造を示した。
最大で高さ35メートル、20万立方メートルの残土を盛るが、「震度7相当の地震が発生しても崩れない設計をしている」と強調。万が一、盛土が崩壊した場合でも、洪水などで必要な河道の面積は確保され、「小渋川への影響は小さい」とした。
◎写真説明:大鹿村のリニア連絡協議会