JR東海は8日、豊丘村のリニア中央新幹線伊那山地トンネル坂島工区(約5・1キロ)の斜坑掘削現場で同日午前に崩落が発生し、50代男性作業員が軽傷を負ったと発表した。事故原因の調査のために当面の間、同工区での工事を中断するが、その他の工事は続ける方針という。
事故は午前8時20分ごろ、坑口の坂島非常口から約200メートル掘り進んだ地点で発生した。JRによると、発破のため切羽(掘削面)に開けた穴に火薬を入れていたところ、作業員の1人が異変に気付いて退避を開始。その際に切羽の左側が幅約6メートル、高さ約5メートル、厚さ20~50センチにわたって崩れ、5立方メートルの土砂の一部が男性作業員の右脚に当たった。
男性作業員は工事を請け負う建設会社の車で松川町内の病院に搬送されたが、右ふくらはぎの筋肉の炎症と診断された。坑内には当時8人の作業員がいたが、他にけが人はいない。
坂島非常口から本坑トンネルまでつなげる延長約1・44キロの斜坑で、ことし7月に掘削に着手。山岳工法のNATM(ナトム)で掘り進めている。10月27日に岐阜県中津川市のリニア瀬戸トンネルで発生した死亡事故を受けて掘削を一時中断し、1日に再開したばかりだった。
同社広報部によると、事故の原因は不明。「厚労省の定めるガイドラインに沿って作業を行っていたことは確認できている」とした。
いずれの事故も掘削した表面の土砂や岩石などが落下する「肌落ち」という現象が起きたとみられるが、「中津川の事故は発破後、今回の事故は発破前で状況が違う」と説明している。
事故を受け、飯田市の佐藤健市長は「中津川の事故を受けて安全対策の徹底などについて申し入れを行った矢先の事故であり、大変遺憾。連絡体制も含めた危機管理体制の再徹底を強く要望していきたい」とコメントした。
◎写真説明:事故が発生した斜坑内の現場(JR東海提供)