阿智村は5日夜、清内路地区で住民向けのリニア説明会を開いた。熊谷秀樹村長がリニア整備対策室長の民間登用について説明し理解を求めたが、住民からは人事案への異論やこれまでの村の対応を批判する声が相次いだ。
住民ら約60人が参加。公開で行い、村議や村リニア対策委員会幹部も傍聴した。
村は同室を4月に新設し、現在は室長を副村長が兼務。熊谷村長は6月、室長を民間の金融機関から登用する方針を示したが、清内路自治会や工事に関係する村道の地権者らが16日、「地域の実情を熟知した村職員や、専門的知見を持った県職員を選任してほしい」とする要望書を村に提出した。
説明会で熊谷村長は「昨年、県に管理職クラスの派遣を要望したが、コロナ対応などで多忙のため断られた。村職員は人事のタイミングが合わなかった」と経緯を説明。「民間の管理職を経験し、交渉力がある人。阿智に勤務経験があり、多くの人を知っている。地区のために働いてくれると信じており、責任を持って推薦したい」と登用に理解を求めた。
一方、会場からは「リニア推進とされる企業からの人ではうまく交渉できないのでは」「住民の気持ちが分かる人に」などの異論が相次ぎ、人事案の白紙を求める声も出た。
「住民に寄り添う姿勢が見られない」と、これまでの村の対応への不満の声も上がり、男性住民は「かつてのように役場に行っていろんな話ができる雰囲気をつくって」と求めた。熊谷村長は「これからも住民との懇談会を重ね、多くの声を聞ける場をつくっていく」と述べた。
別の男性は「長期間の事業で室長がすぐ変わる体制は良くない」と指摘。熊谷村長は「できるだけ長く務めてもらい、県職員にも加わってもらいより強固な体制をつくりたい」とした。
また、人事案を巡り清内路自治会の役員会で話し合いをした際、村が無断かつ実名入りで村議会の全員協議会に情報提供したとして、自治会長が抗議文を提出。熊谷村長は「不注意だった」と陳謝した。
派遣先企業に支払う負担金を盛った人事案の関連予算案について村議会は「住民への説明が必要」とし、6月議会の会期を6日まで延長している。
◎写真説明:住民に説明する熊谷村長(清内路公民館で)