リニア中央新幹線計画で、JR東海は30日、飯田市の中央アルプストンネル松川工区(4・9キロ)で本坑(本線トンネル)の掘削を開始した。県内での本坑掘削は伊那山地トンネル青木川工区(大鹿村―豊丘村)、南アルプストンネル長野工区(大鹿村―静岡県)に続き3番目で、市内工区では初。名古屋方面に向けて掘り進める。
鼎切石の妙琴公園内から本線トンネル予定地へ向けて進めていた斜坑(作業用トンネル)の掘削が7月に完了し、本坑交点部に到達していた。
本坑は幅13メートル、高さ8メートルで、掘削断面積は約100平方メートル。最大土被りは坑口の西約3・2キロの地点で約600メートルとなる。準備工の遅れによって工事期間は延び、松川工区の工期は2027年2月まで。作業用トンネルは全長約380メートルで、工事完了後に閉塞する。
掘削残土は仮置きしない計画で、下久堅、龍江産業用地、黒田工区の市内活用先へ直接運び込む。
工事用車両の運行台数は8月中旬まで1日当たり最大120台(片道)とし、本坑掘削に伴って同210台の運行を予定する。
松川に架かる工事用仮設桟橋で左岸の県道飯田南木曽線と右岸の市道大休妙琴線をつなぎ、残土運搬車両は両路線を一方通行で走行。主に中央道と三遠南信道を使って残土置き場へ運ぶ。
市内の坑口3カ所から出る残土は約185万立方メートルを見込み、松川工区が約90万立方メートル、黒田工区が50万立方メートル、上郷工区が45万立方メートル。
松川工区はJRの委託で鉄道建設・運輸施設整備支援機構が担い、戸田建設・あおみ建設・矢作建設工業の共同企業体(JV)が施工。トンネル工は山岳トンネル向きの「NATM(ナトム)工法」を採用し、掘削箇所を吹き付けコンクリートやボルトで固めながら西方向へ掘り進める。18年3月に工事着手している。
◎写真説明:妙琴公園内の施工ヤード