飯田市のリニア中央新幹線中央アルプストンネル松川工区(4・9キロ)で、鼎切石の妙琴公園内から本線トンネル(本坑)予定地へ向けて進めていた斜坑(作業用トンネル)の掘削が完了したことが19日、分かった。本坑の掘削開始時期についてJR東海は「準備ができ次第」とし、名古屋方面に向けて着手する見通し。市内工区の本坑掘削は初となる。
作業用トンネルは全長約380メートル。昨年9月に掘り始め、今月に本坑交点部に到達した。
JRは当初、本坑から直接掘削する計画だったが、施工ヤードに作業用トンネル坑口を設けて掘り進めることに変更。「想定したよりも地表面がもろかった」とした。
本坑は幅13メートル、高さ8メートルで、掘削断面積は約100平方メートル。最大土被りは坑口の西約3・2キロの地点で約600メートルとなる。準備工事の遅れによって工事期間は1年4カ月延びる見通しで、松川工区の工期は2026年9月まで。作業用トンネルは工事完了後に閉塞する。
掘削残土は仮置きしない計画で、下久堅、龍江産業用地、黒田工区の市内活用先へ直接運び込む。
工事用車両の運行台数は8月中旬まで1日当たり最大120台(片道)で、下旬から同200台の運行を予定する。
松川に架かる工事用仮設桟橋で左岸の県道飯田南木曽線と右岸の市道大休妙琴線をつなぎ、残土運搬車両は両路線を一方通行で走行。主に中央道と三遠南信道を使って残土置き場へ運ぶ。
市内の坑口3カ所から出る残土は約185万立方メートルを見込み、松川工区が約90万立方メートル、黒田工区が50万立方メートル、上郷工区が45万立方メートル。
松川工区はJRの委託で鉄道建設・運輸施設整備支援機構が担い、戸田建設・あおみ建設・矢作建設工業の共同企業体(JV)が施工。トンネル工は山岳トンネル向きの「NATM(ナトム)工法」を採用し、掘削箇所を吹き付けコンクリートやボルトで固めながら西方向へ掘り進める。18年3月に工事着手している。
◎写真説明:妙琴公園内の施工ヤード