リニア中央新幹線県内駅(飯田市上郷飯沼・座光寺)からJR飯田線への接続を円滑にする乗換新駅を巡り、佐藤健市長は12日の市議会リニア推進特別委員会で、乗換新駅を造らない方針を改めて示し「乗換新駅が含まれない形の計画案、予算案を今後提案していくことになる。議会側の判断を仰ぎ、市の意思として積み重なっていく」と述べた。議会側から異論はなかった。
6月に市側が提示した「乗換新駅設置と既存駅活用との比較検討」の結果を踏まえた。
佐藤市長は新たな技術や交通システムを重要視し「予測が難しく、早いスピードで変わっていく」と予想。対応するためには「接続駅という形で大きなものを造るよりは、変わっていく新しい技術に対応する可変性を持たせる方が良い」と加えた。
需要の変化も捉え「(JR飯田線の飯田駅、元善光寺駅の)既存駅との接続について、その時々の交通システムを用いることで需要の増減にも柔軟に対応できる」と説明。全体的、総合的判断の基で「既存駅を活用する形でその時々の交通システムを利用する」と理解を求めた。
比較検討は、JR飯田線に乗換新駅を整備して移動に活用する場合と、リニア駅とJR飯田線の既存駅を接続して移動に活用する場合の2つをケース設定した。
乗換新駅だと、リニア駅までの距離は約300メートル。接続方法として徒歩やタクシーを想定した。評価項目のうち経済性について、イニシャルコストとして新駅舎が約8億円、ランニングコストとして運行経費が年間約360万円。所要時間は、市田間が約13分、天竜峡間が約42分。待ち時間は、市田間が平均32分、最大約99分で、天竜峡間が平均38分、最大約113分。乗換回数は1~2回。波及効果については、地理的・地形的条件から利用が限定的で「移動や乗換といった交通面以外での効果は期待しづらい」。
リニア駅から1・1キロ離れた元善光寺駅を活用した場合だと、接続方法として徒歩、自転車、タクシー、バスを想定。イニシャルコストは元善光寺駅の駅前広場整備費に約2000万円、ランニングコストは運行経費に年間約1300万円。所要時間は市田駅から約7分で、待ち時間は市田駅が平均32分、最大約103分。乗換は2回必要となる。波及効果については元善光寺やエス・バードとの接続によって「地域活性化への寄与が期待できる」とみる。
ランニングコストについて、担当課は既存駅を活用する方が高額としつつ「リニア開業以降の小型自動運転バス実用化までの期間を考慮すると、総額的に安価になる」とする。
佐藤市長は2020年の市長選で乗換新駅設置を取りやめる意向を表明。リニア駅との接続方法については「乗換新駅を造らないということを含め検討していく」としていた。