リニア中央新幹線県内駅(飯田市上郷飯沼・座光寺)の周辺整備事業で、市は4日、土木工事の実施設計を公表した。駅前広場となる約6・5ヘクタールを模型化。200分の1のサイズの模型を初公開し、全体の平面図と配置図を示した。市は今後、工事着手に向けた準備を進める方針で、来年秋以降をめどに造成工事に着手する。
2度の報告会を開き、寄せられた意見や要望を設計に反映させる形で全体像をまとめた。
多目的広場を駅の南北に配置し、うち北側は4500平方メートル、南側は7000平方メートル。高架下を挟んで南北にできる交流広場は1万5000平方メートルとなる。駅南側には9000平方メートルのコミュニティー広場も計画する。
南北の交通広場エリアから高架下までの歩行者ルートを中心に、駅のシンボルとなる木製の「大屋根」を配置。乗降場から雨に濡れずに高架下空間へ行けるよう天候バリアフリーを確保する。
モビリティーに関する技術革新のスピードを見据え、将来の変化に柔軟に対応できるような可変性を備えるとして、地下式調整池の上部をレンタカーやカーシェアリングのスペースにすることも視野に入れる。
EV自動車の充電ステーションを3カ所程度配置。水素などのクリーンエネルギーを供給するエコステーションの必要性も検討を進めるとした。
駐車場を5カ所に設置し、駐車台数は全体で500台。
駐車場、多目的広場、コミュニティー広場については、自然が持つ多様な機能を持続可能な社会の基盤に生かす「グリーンインフラ」の観点を取り入れて整備する。
この日はリニア駅前空間「結いの広場」の土木設計の成果発表会と題し、交通広場、駐車場、交流広場・コミュニティー広場といった各エリアの機能や空間のイメージが伝わるようパースを交えて説明。建築家で、結いの広場のデザインに関わる北川原温氏が模型を使って解説もした。
結いの広場プロジェクトでチームリーダを担う小澤一郎氏を迎え、佐藤健市長、北川原氏の3人によるトークセッションもあった。佐藤市長は「今後の利用に向けたイメージを膨らませてもらえたら」と話した。
ユーチューブの飯田市チャンネルでオンライン配信した。
駅周辺整備の具体化に向けては、2015年6月に基本構想、17年6月に基本計画をそれぞれ策定。19年12月までに基本設計をまとめた。
基本設計によると、駅周辺整備の初期整備費は91億円。91億円のうち用地物件補償費は42億5000万円、委託費は7億4000万円、整備工事費は41億1000万円。財源として国庫補助金などを活用し、市の実質負担額は39億4000万円となる。
整備費91億円について、佐藤市長は物価高や資材高を指摘しつつ「基本設計の概算を大きく逸脱することがないよう考えなければならない」とした。
大屋根など建築の実施設計は来年秋にも着手したい考えで、25年度の工事着手を目指すとする。
◎写真説明:駅周辺6・5ヘクタールを模型化