JR東海が東京・品川―名古屋間の開業を目指すリニア中央新幹線計画は、22日に長野県駅(仮称、飯田市)で着工を迎えた。起工式で阿部守一知事はリニア開業を「首都圏と遠い南信州地域の長年の悲願」と捉え、開業に向けては「工事が安全かつ速やかに進むように」と願った。飯田市の佐藤健市長も地元自治体として協力する姿勢を強調した。
歓迎の一方、阿部知事は移転を余儀なくされる人や残土置き場の確保、工事用車両の通行、将来的な騒音などに触れた上で「住民の多くの思いや声に県として向き合っていく」とし、JR東海に対しても「多くの声にしっかり応え続けてほしい」と要望。佐藤市長も「地元に寄り添った対応を」と求めた。
佐藤市長はリニア開業効果に期待感を示した一方で「この日を迎えられたのも、ひとえに地権者や地元の理解と協力があってこそ」と改めて感謝の言葉。地元自治体として「リニア時代のまちづくりにしっかり取り組むことが、協力をいただいた地権者や地元に対して報いることになる」と決意を新たにした。
起工式後、佐藤市長、JR東海の金子慎社長、清水建設の井上和幸社長が報道陣の取材に応じた。県駅はホーム2面、線路4線で、ホーム区間は最大で幅約40メートル、高さ約20メートルの高架の駅となる。井上社長は「全長950メートルの工事となり、工事用車両の数も相当数の出入りが予想される」とした上で「地元への影響を最小限にできるよう工夫し、安全第一で仕事を進める」と述べた。
土木工事の工期は2026年3月末までを予定する。開業時期について金子社長は「南アルプストンネルの静岡工区に着工できていないので、そこが着工できないと開業時期は申し上げられない」と従来通りの説明にとどめた。
中間駅の着工は19年の神奈川県駅(仮称)、今年6月の岐阜県駅(仮称)に続き、3カ所目。
◎写真説明:起工式後に取材に応じる佐藤市長(右)、金子社長(中央)、井上社長