リニア中央新幹線の本線工事と駅周辺整備、関連道路事業について、飯田市は時点修正した2023年度版の工程表「リニア推進ロードマップ」を14日の市議会リニア推進特別委員会に示した。本線工事のうち風越山トンネル黒田工区は作業用トンネル(非常口)を掘り進めるためのヤード整備を進めており、今夏にもトンネル掘削を開始する見通し。
黒田工区は飯田文化会館北の黒田非常口から松川までの約2・3キロで、21年7月に準備工事している。27年完成予定。
鼎切石の妙琴公園内から阿智村までの中央アルプストンネル松川工区(4・9キロ)は22年8月に本坑(本線トンネル)の掘削を開始し、2月末時点で約300メートル掘削。26年度の完成予定とした。
風越山トンネル上郷工区(3・3キロ)は準備が整い次第、トンネル掘削のための準備工事を始める予定。
上郷工区は地下水への影響が小さい「シールド工法」を採用し、JR飯田線との交錯付近から西側へ掘り進める。シールドトンネル工事に向けては発進坑を整備し、高さ22メートルの大型クレーンなどを使ってシールドマシン(掘削機)を組み立てる。組み立て後、防音ハウスを設置して本線トンネル掘削の準備を進める。計画によると、シールドマシンは25年度頃に組み立て、シールドトンネル工事は25年度以降に始まる見通し。
上郷飯沼・座光寺に新設する県駅(仮称)は、23年度に埋蔵文化財調査を計画し、土曽川橋りょうの橋脚基礎工事を進める予定。昨年9月の工事説明会で提示した計画によると、駅工区のうち土曽川橋りょう、竜西一貫水路付け替え、新戸川付け替えの3カ所を先行着手する。
座光寺地区の天竜川右岸の高架橋・天竜川橋りょうは地元との協議を進め、23年度に天竜川橋りょうの準備工事に着する予定とした。
市内の坑口3カ所から出る残土は約185万立方メートルを見込み、松川工区が約90万立方メートル、黒田工区が50万立方メートル、上郷工区が45万立方メートル。残土の活用先として市内では下久堅と山本の両地区で計画する。
駅周辺整備などで移転を迫られる住民を対象に、上郷の「丹保・北条」、座光寺の「唐沢・宮の前」と「共和」の計3地区で市が整備する移転代替地について、代替地整備完了したとして記載を削除した。
23年度はリニア本線や関連事業が本格化する見通しで、地図や工程表で具体的に示すことで効果的に事業進ちょくを図るとする。
駅周辺整備区域(6・5ヘクタール)に南側で接する「重点協議区域」(1・3ヘクタール)を巡り、岡田倫英議員が検討状況を求めたのに対し、市側は駅周辺の計画が固まった段階で先へ進める意向を示した。
重点協議区域は南信州広域連合がリニア時代に向けて整備を検討する「アリーナ機能を中心とする複合施設」の候補地に挙げられているものの、複合施設の計画は建設地を含め具体化していない。
駅周辺整備区域は当初7・8ヘクタールをエリアに検討してきたが、地元の意向を踏まえ、17年6月に策定した「リニア駅周辺整備基本計画」の中で6・5ヘクタールに縮小。残りの1・3ヘクタールを重点協議区域に位置付けた。地権者や周辺住民らと協議を重ねるとともに、社会情勢を見据えながら民間活力の動きを見定め、必要な用途や規則を検討していく―としていた。