飯田市の上郷飯沼と座光寺で新設するリニア中央新幹線県内駅(仮称、全長950メートル)で、JR東海は7日夜、着工の前提となる工事説明会を北条地区の住民を対象に公開で開いた。駅工区のうち「土曽川橋りょう」「竜西一貫水路付け替え」「新戸川付け替え」の3カ所を先行着手する計画で、工事概要や工事用車両の運行計画などを提示。古谷佳久担当部長は説明会後の取材に「11月末の準備工事着手を目指す」と答えた。
座光寺側の駅東部のうち土曽川橋りょうは、土曽川と国道153号を延長約120メートルの橋桁でまたぐ。3つの橋脚のうち東側から着手する予定で、用地取得ができた箇所から順次工事に入る。地下水の浸入を防ぎながら基礎を沈設する「ニューマチックケーソン工法」で基礎部を施工する。
新戸川はリニア本線と交差するため、付け替え工事を行う。開渠と暗渠を順次施工した後、新戸川を付け替え区間に切り替え、旧新戸川を埋め戻す。
リニア本線と交差する竜西一貫水路についても、本線の下をくぐるような構造で付け替える。水の利用が少ない非灌がい期に、付け替え範囲を迂回する形で仮切り回し水路を設け、灌がい期にも通水しながら作業をできる状態にする。水路の維持管理用のスペースを2カ所設ける計画。
計画によると、土曽川橋りょうは来年1月以降に下部工に着手し、上部工は2024年夏になる見通し。新戸川付け替えは来年夏頃の着手を想定。竜西一貫水路の付け替えに向けては工事完了後の維持管理方法などについて関係機関と協議を行っており「協議が整った後に工事着手する」とした。
残る高架橋と土構造物は計画が具体化した後に改めて説明する見通し。
リニア県駅西にできる風越山トンネルのうち 未着工の上郷工区(3・3キロ)についても説明があった。地下水への影響が小さい「シールド工法」を採用し、JR飯田線との交錯付近から西側へ掘り進める。
本線と土曽川付近を結ぶ「作業用トンネル」内のベルトコンベヤーを使って掘削残土を搬出する計画で、本線掘削のための準備工事として作業用トンネルと2カ所の施工ヤードを先行着手する。
作業用トンネルは延長350メートル。最大土かぶり約70メートルで、幅5・5メートル、高さ4・5メートル。作業用トンネルの設置に向けては、土曽川付近の施工ヤードから掘削し、本線トンネルの掘削起点となる発進坑に接続する予定。掘削機を使って24時間交代制で掘削する。最終的に埋め戻す。
駅工区と上郷工区で出る残土は当面、喬木村阿島の堰下ガイドウェイヤードへ運搬する。
高架橋とシールドトンネルの開始に伴って工事用車両の台数が増える見込みで、国道153号の1地点を通る台数は1日最大約380台(往復)とした。
シールドトンネル工事に向けては発進坑を整備し、高さ22メートルの大型クレーンなどを使ってシールドマシン(掘削機)を組み立てる。組み立て後、防音ハウスを設置して本線トンネル掘削の準備を進める。
シールドマシンは外径約14メートル、機長約15メートル、総重量は3000トン。工場で製作されたシールドマシンを陸上輸送できる大きさに分割し、トレーラーやトラックで運び込む。
計画によると、シールドマシンは25年度前後に組み立てる予定。シールドトンネル工事は25年度以降に始まる見通し。
8日は座光寺地区、27日は上郷地区全体を対象に工事説明会を開く。
◎写真説明:上郷公民館で開かれた工事説明会