リニア中央新幹線の瀬戸トンネル(岐阜県中津川市)の工事現場で作業員2人が死傷した崩落事故で、JR東海は28日、品川―名古屋間の14工区の山岳トンネル掘削工事を一時中断することを明らかにした。全作業員に安全対策や作業手順を徹底した上で、週明けにも工事を再開したい考え。全体の工期については「大きな影響はない」としている。
県内で中断しているのは大鹿村の南アルプストンネル長野工区、伊那山地トンネルの青木川工区(大鹿村)と坂島工区(大鹿村―豊丘村)、戸中・壬生沢工区(豊丘村)、中央アルプストンネル松川工区(飯田市)の5工区。
瀬戸トンネルについては、原因を究明した後に再開する見通し。
事故は27日午後7時20分ごろ、非常口トンネル(全長600メートル)の坑口から70メートル地点で、ダイナマイトを使った発破作業の後に発生した。JR東海広報部によると、作業員が爆破状況の確認のため近づいた際に、表層がはがれ落ちる「肌落ち」が発生。救出に向かったところ、さらに大きな崩落があって作業員2人の上に落下した。44歳男性が死亡し、52歳男性が左足首付近を骨折する重傷。
奥村組など3社でつくるJV(共同企業体)が工事を請け負っている。
崩落事故を受け、飯田下伊那地域の沿線の首長からは検証と再発防止を求める声が相次いだ。
飯田市の佐藤健市長は「(安全に工事を進めることは)環境への配慮や地元地域への丁寧な対応とともに最優先事項」と指摘。その上でJR東海に対して再発防止策の徹底と、事故発生後の速やかな情報共有を求めたいとした。
豊丘村の下平喜隆村長は「死亡事故が起きた以上、中断は当然のこと」ときっぱり。阿智村の熊谷秀樹村長も同様の受け止めで「事故の検証をしっかりと行い、安全の確認をした後に再開してほしい」と願った。
喬木村の市瀬直史村長は原因をしっかり特定し「安心安全な施工のめどが立つまで検証を」と話した。
トンネル掘削工事が進む大鹿村の熊谷英俊村長は「トンネル工事はリニアに限らず常に危険と隣り合わせの工事であり、完全に事故を防ぐことが難しいことは理解しているが、安全対策に落ちがなかったかどうか再確認した上で再開してほしい」と語った。
◎写真説明:掘削工事を中断している戸中・壬生沢工区