「リニア中央新幹線整備を地域振興に活かす伊那谷自治体会議」は18日、オンラインで開いた。地方回帰の潮流やDX(デジタル変革)、脱炭素など社会変化に対応し、新たな視点を「リニアバレー構想」に取り入れることを議論した。
上下伊那の3市長と広域連合代表の2村、県地域振興局、座長の阿部守一知事が各会場をオンラインでつなぎリモート会議形式で実施した。
リニアバレー構想は2016年2月に、リニア駅勢圏となる伊那谷全体の地域づくりの指針として策定。今回はその後の社会変化を踏まえ、新たな視点を取り入れようと幹事会での議論を経て素案をまとめた。
素案では▽コロナ禍で加速した地方回帰の潮流を地域の持続的発展につなげる▽暮らしのあらゆる分野でDXを推進▽脱炭素社会の実現―の3つを提示。
DXでは観光地のデジタル化やキャッシュレス化の推進、脱炭素では県企業局と連携した水力発電所建設など再生可能エネルギーの普及などの視点を挙げた。
伊那市の自動運転やドローン配送、飯田市の駅周辺のスマートグリッドなど、各市で個別の取り組みが進んでいることから、意見交換で飯田市の佐藤健市長は「各市の先進的な取り組みを情報共有する場を設け、伊那谷全体で横の連携をしていくことが必要だ」と語った。
駒ケ根市の伊藤祐三市長は、県内他地域より訪日外国人旅行客の受け入れが遅れていることから、コロナ後を見据えてインバウンドの視点を取り入れるよう提案。豊丘村の下平喜隆村長は、マーケティングの視点を取り入れるべきとした。
阿部知事は、対外的に発信できる伊那谷全体としてのブランディングが必要だと助言。また、専門家による調査に基づいて将来を構想し、具体的な活動につなげるよう求めた。素案は民間の意見なども取り入れた上で次回の会議に提案される予定だ。
喫緊に取り組む課題についても意見交換。「広域二次交通の整備」については、乗換え駅を廃し新モビリティシステムでリニア駅~元善光寺~エス・バードをつなぐ案に変更したことなどから「自動運転など技術進展は目覚しい。陳腐化しないよう柔軟な対応をするべき」(佐藤市長)などの意見があった。
「企業立地促進」では、伊那谷に次世代高速通信環境の整備が必要だとして、リニア中央新幹線整備とともに敷設が想定される高速通信ケーブルを活用する案が語られた。
この他、飯田市は駅周辺整備の検討状況を報告した。グリーンインフラやゼロカーボンシティモデルエリアを設ける構想を紹介し、学びの拠点となる大学誘致に協力を求めた。
◎写真説明:リモート形式での伊那谷自治体会議