リニア工事費めぐり松本で合同説明会

リニア中央新幹線

[ 2009年 6月 30日 火曜日 14時09分 ]

 東京-名古屋間を結ぶリニア中央新幹線計画で、JR東海と県は29日、松本市で県内5地区の期成同盟会を対象にした説明会を開き、同社が先に提示した建設費など3ルートの試算結果を示した。意見交換では飯田下伊那地域の関係者がCルート支持を打ち出し、「Bルートは県民の総意」とする県や他地域の主張を否定。上伊那、諏訪地域の出席者は試算の算定根拠に疑問を呈し、飯伊の声には小坂樫男伊那市長が「問題発言だ」と不快感を示した。
 飯伊の40人余を含め、5地区から240人が出席。冒頭を除いて非公開で行い、終了後に両者が報道陣に内容を説明した。

 JR東海は、同社が想定する南アルプスルート(直線ルート・C案)が286キロで工事費5兆1000億円、長野県が求める伊那谷迂回ルート(B案)が346キロで同5兆7400億円だった各路線の長さや工事費、所要時間などの試算結果を報告。工事費算出の考え方や今後のスケジュールなどを示し、質問に応じた。

 出席者らによると、質疑では主に上伊那や諏訪地域の関係者が「算出の根拠にした単価を示してほしい」「南アトンネルの工事費が想定以上にかかる場合、C案の優位性が崩れるのでは」「B案を高く、C案を安く見積もっていないか」など、建設費の算出やその根拠となる単価をめぐる疑問を相次いで投げ掛けた。

 同社の増田幸宏・東海道新幹線21世紀対策本部長らが回答し、単価は「今後の契約に不都合が生じる恐れがあり、答えられない」、試算は「鉄道運輸機構とすり合わせて算出した。信頼してほしい」とした。

 試算の積算根拠を示さなかった同社に「納得できない」と不満をぶつけた両地域からは、1989年に協議会が意思決定したBルート決議の重みを認識するよう求める声や、合理性を追求する民間思考を批判する意見、全国新幹線鉄道整備法が掲げる「沿線の振興への寄与」を踏まえるよう要求する主張が続いた。

 同部長は「安定経営を大前提として5・1兆円(のCルート)であれば負担できると決断した。この発想は民間の枠を超えた重い決断だと考えている」と公共性の高さを強調するとともに、「長野県が20年前にBルートを決議したことは承知しているが、そのずっと前から中央新幹線の計画があり、なかなか進まなかったという現実がある。我々の表明で動き始めたという点も理解してほしい」と訴えた。

 同社はまた、沿線地域の振興について「ある部分の最適が全体の最適かという議論もしたい」とし、沿線全体をとらえた広い視点を強調。南アトンネルの実現性は「土かぶりが1300メートルほどとなり、単価も高くなる予想だが、簡単ではないが掘れると結論付けた」と回答したという。

 Bルートを求める質疑が大半を占めるなか、飯伊の関係者が「少なくともきょう飯田から参加した我々馭人の総意はCだ」と発言し、会場が騒然となる場面もあった。

 「Bルートは総意」と繰り返してきた小坂伊那市長は、主張に水を差す形になった飯伊の声を「問題発言だ」と批判し、不快感を露わにした。

 終了後、県の望月孝光企画部長は「単価を示せないのであれば、工夫して納得した説明をしてほしい」とJR側に要望。増田本部長は、今後示す需要想定や維持運営費について「要望があれば今回と同じような場を設けて説明したい」と話した。

 ×   ×

■地域対立が表面化・「総意」崩れて意見分裂

 県内5地域の期成同盟会が一堂に会した今回の説明会。県が旗印として掲げる「総意」の言葉とは裏腹に、経路選定をめぐって地域間で意見が分かれていることが浮き彫りとなり、地域間対立が表面化してきた。

 飯伊の関係者が県や上伊那・諏訪地域とは異なる「Cルート支持」を打ち出すと、飯伊の関係者からは拍手が沸き起こり、他の地域からは怒号が向けられたという。

 意見交換の最後に発言した飯田商工会議所の柴田忠昭副会頭は「先ほどから長野県の総意はBルートだと意見が出ているが、少なくともきょう飯田から参加した我々の総意はCだ」と強調。「Bルートが総意」と繰り返す他地域の主張に対して「決定は20年前の話。経済、社会の情勢は大きく変わっており、今回示された客観的な数値を踏まえるべきだ」と指摘した。

 JR東海の試算に疑問を呈した声にも「我々が判断することは不可能。試算結果をまず受け止めることが必要だ」と呼び掛けた。

 この発言を受け、終了後の会見で小坂樫男伊那市長は「少なくとも飯田商議所も入ってみんなでBルートを決めた。飯田も通るわけだから、問題発言だと思う」と不快感を露わにした。

 伊那市からは、副市長も出席してそろってJR東海の試算に疑問を投げ掛けたが、飯伊の行政担当者からの発言はなかった。

 こうした姿勢を冷静に受け止めた県の望月企画部長は「飯田もその時(の説明会)の出席者によって地域の意見も違う。きょうはその意見が出た」と、C案支持は一部の声に過ぎないとする見方を示した。

 同部長はまた、経路に触れるのを避けた飯田市議会とBルートを強調した伊那市議会の決議も比較。「飯田市議会はルートには触れず、駅と整備促進をいっているので、それはそれなりの考え方なので仕方がないと考えている。県の協議会の中でじっくり意見交換したい」と話した。

 南信州新聞社が昨年末に実施した世論調査(回答者134人)では、57・6%が「直線ルート」を支持し、伊那谷迂回ルート支持の32・6%を大きく上回っている。

  

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