飯田下伊那地域の民間80団体でつくるリニア中央新幹線飯田駅設置推進協議会は25日、総会を開き、解散した。目標としてきた飯伊への中間駅設置が現実化したため。目的を地域振興やまちづくりなどに絞った新組織の設立含みだが、今後の展開については「時間を置いて慎重に検討する」としている。
事務局の飯田商工会議所が前日のリニア特別委員会で解散する方向性を確認。この日午前に開いた正副会長会の冒頭、柴田会頭がその旨を伝えて「目標にしてきた『南アルプスルートによる実現』『リニア飯田駅の実現』が達成したという現実を踏まえ、一区切りをつけて一定の方向性を出したい」とし、積極的な検討を求めた。
同会の意見交換では解散に異論はなかったものの、新たな方向性について「駅ができてから地域をどう活性化するかが最大の課題。広域的な行政や県を含む新たな枠の中で新しい組織をつくるべき」「市民の意見を聞ける経済団体の組織が必要」「若い世代の声を反映できる組織がいる」など多様な意見が出された。
会の位置付けについては飯伊期成同盟会との関係性をめぐって「一枚岩となり官民一体で取り組むべき」「単独行動をせずにしっかり連携するべき」とする声がある一方、「同盟会にモノ言える組織がいる」「飯田のエゴに陥らぬよう、広域的な声を反映させる団体が必要」との意見もあり、周囲の情勢と今後の方向性を見極めて対応することで一致した。
午後1時から総会を開き、解散案を可決した。
柴田会長は「新たに浮上していた中間駅の建設費負担の問題もJR東海が全額自己負担をすると発表した。長野県全体の駅としてより良い中間駅にするため、JR東海を応援しなければいけないという思いを一層強くしているが、会名どおり飯田駅の設置推進という意味では役割を終えた」と話した。
推進協は2008年9月に発足。ルート問題で県内が揺れる中、同年11月に「南アルートを視野に入れた早期実現を目指す」「飯田駅設置を目指す」との決議を行い、表面化していなかった飯伊住民の声を代弁。同年以降は「JR東海を組織を挙げて支援する」などの決議を重ねたが、中間駅の設置場所をめぐって飯田市などが展開した「現飯田駅併設運動」には消極的な姿勢だった。
昨夏からは中間駅の建設費や周辺整備に充てる目的の市民募金を展開し、約1000万円を集めているほか、リニアセミナーの開催を重ねたり、多彩な啓発物を作成してリニアに対する市民の気運を盛り上げていた。
リニア市民募金は共同で進めていた飯田商議所が引き継ぐ。
商議所は、上伊那地域など他地域の経済団体にも呼び掛けて沿線地域の経済振興やアクセス性の向上などを目的にした広域的組織の設立を目指しているが、推進協の後継組織とどう関係していくかは不透明だ。