11日に開かれた飯田市の「リニア駅周辺整備デザイン会議」で、市は上郷飯沼で進めるリニア中央新幹線県内駅周辺整備(6.5ヘクタール)の基本設計案を発表した。委員からは異論はなく、肯定的な意見が続いた。初期整備として91億円を想定し、整備工事費はうち41億円。牧野光朗市長は整備工事の規模感として市役所本庁舎を挙げた上で「実施設計でさらに見直しをかけながら現実的なものにする」と述べた。
委員からは「他にはない駅になる」「変化に柔軟に対応できる大屋根」「シンボルになる」といった声が上がった。デザイン会議の会長で、都市づくりパブリックデザインセンター顧問の小澤一郎さんは「中間駅を含め世界に示すショーケースにするような志を持って実施設計を進めてもらえたら」と期待を込めた。
基本設計案の「飯田・リニア駅前空間デザインノート」は、「信州・伊那谷の個性で世界を惹(ひ)きつけ、世界へ発信する玄関口」を基本的な理念に据える。
基本方針はアクセスやバリアフリーに優れた駅前空間や▽住居や来訪者の居場所となる▽伊那谷の風景の魅力を引き出す▽人のつながりと伊那谷全域へといざなう▽時代を先取りし、変化に対応できる―の5つ。駅のシンボルとなる木製の「大屋根」を設置し、魅力発信施設や交流広場、駐車場、多目的広場、エネルギーセンターなどを整備する。
駅舎から南北に延びる大屋根は森をイメージし、3次元的な「樹状形状」にした。計画面積1.6ヘクタールのうち約1.1ヘクタールを開業時までに先行して整備する。会合では「市民参加で試作して耐久性などをチェックし、PRにもつなげたら」といった声が出た。
乗り換え新駅はJR東海との調整を含め未確定とし、現段階では概算事業費には盛っていない。
施設の運営や維持管理、保守点検など、駅周辺のランニングコストとして年平均6500万円が必要となる見通し。
財源確保に向けて、県内駅周辺整備事業を国の国土政策として位置付けて支援するよう国へ働き掛けるとする。
デザイン会議はこの日が最後となり、実施設計の段階に移る。今回まとめた基本設計案は今後、住民説明会やパブリックコメント(意見公募)などの意見を反映させ、年内に正式決定する。
◎写真説明:基本設計が示されたデザイン会議