東京―名古屋を結ぶリニア中央新幹線計画で、JR東海による環境影響評価準備書の県内説明会が2日、阿智村の清内路会場からスタートした。住民ら約100人が参加し、村内を通るトンネル掘削に伴う残土輸送の影響などについて質問を重ねた。15日の飯田市座光寺まで、飯田下伊那地域の10カ所を含む県内12会場で開く。
同社は▽路線概要▽設置する施設・設備の概要▽県内の環境アセスメントの結果▽地下水・水資源・発生土の対応▽同評価の手続き―について説明。同村内の路線は延長が約3キロで下清内路地区の東部に非常口を設け、周辺に発生土の仮置き場やコンクリートプラントなどを置く施工ヤードを設ける予定とした。
同村内で71万立方メートルを予定している残土の輸送は、非常口から黒川沿いの村道約3キロを経て、国道256号を通る予定を伝え、「南木曽町の非常口2カ所から出る残土を下伊那側に運んだ場合、同国道を通る工事用車両の台数は1日最大920台」と説明。村道通過分のみでは1日最大250台とする見通しを伝えた。
残土の処理は県を窓口に市町村の斡せんを求めているとする一方、困難な場合はJR東海自身が利用法や置き場を探るとの考えを示した。
質疑の時間は1時間半余にわたって設け、十数人の質問に応じた。
村内の工事概要について同社は「非常口から約2キロの斜坑トンネルを掘り、本線につながったら東にむかって掘削する」と説明。運搬に使用する村道や国道は「必要により道路管理者や地元と協議し、道路拡幅や待避所整備、橋脚の付け替え、カーブミラー設置などをする」とした。
地下水や河川への影響については「一般的に泥が混ざったような水が出たり、アルカリ性になることが考えられるが、沈殿施設の設定や中和対策をしっかり行い、排水基準に準じて流すよう努める」と強調した。
「斜坑の工事はいつから始め、どのぐらいかかるのか」との問いには、「これから詳細な工程を詰める。工事実施計画認可後の工事説明会で具体的な工事内容や運搬車両のルートを伝える。工事期間は約10年間を想定しているが、実際に掘り進める工事は7年。その間は発生土を運搬するトラックが行き交う」とした。
本坑のトンネル工事は24時間体制で、明かり区間は原則、昼間に行うとし、運搬時間は「昼間に走行する」。騒音について「開業後、非常口から本坑の走行音が聞こえることはない」とした。
用地交渉をめぐり、時期や手法を質問する人もあった。同社は「事業説明会の後に測量をし、必要用地が明確になる。並行して用地取得の説明会を地権者にする」と説明。「開業後も残る非常口の用地は取得したいが、工事で必要な部分は用地を借りたい」との考えを示した。
用地はトンネルと地上の距離が5メートル以内を買収し、5―30メートルは区分地上権を設定した山梨リニア実験線を例に挙げ、保障は「整備新幹線と同様に国の基準に基づいて金銭で補償する」とし、代替地は「原則、本人の判断で探していただくが、困難な場合は、個別に話をする」とした。
工事車両が行き来することになる村道沿いに住む会社員男性(55)は「これまで静かだった場所を多くの車が通るようになることに対する心配はあるが、来るのは決まったこと。後のことをきちんとしてもらえたら。地元とは小まめに話をしてほしい」。
清内路自治会の原和機会長は「非常口周辺、村道―国道間の安全対策をきちんとしてくれたらいいと思う」と話していた。