昨年2月に着工したリニア中央新幹線中央アルプストンネル松川工区(4・9キロ)に関する住民と事業者の懇談会が25日夜、飯田市鼎切石地区であり、住民側が安全対策の改善や徹底を求めた。準備工事の完了時期が半年程度延伸する見通しで、JR東海は「トンネル工事の着手は2020年度中に」と説明。工事用車両の通行台数も当初説明から遅れて推移するものの、「1日当たりの最大台数を超えて実施することはない」とした。
約60人が参加し、JR東海や鉄道建設・運輸施設整備支援機構、JV(共同企業体)、市の担当者らと意見交換。切石区が事前に提出した質問に事業者側が回答する形式で、冒頭以外非公開で行った。
出席者や事業者らによると、地元が提出した質問は残土運搬路となる市道の拡幅や、工事用車両の運行、通学路の安全対策、環境保全対策、工事ヤードとなる妙琴公園の将来像などに関する12項目。
着工前の昨年2月に工事用車両の通行などに関する確認書を結んでいるが、運行計画に関する質問が多かった。
準備工事期間中は1日往復140台、本工事中は片道270台と計画されている最大走行台数に対し、住民側は削減を要望。事業者側はGPSなどを使った車間距離の調整により、残土運搬車両が3台以上連行しない措置を取る考えを示した。
通学路の安全確保では、事業者側が▽グリーンベルトの設置▽迂回(うかい)歩道の整備▽工事車両合図者の配置▽防犯灯または街灯の設置▽貸切車による送迎―などの安全対策を策定したと説明。住民側は継続協議の事項に位置付け、さらに検討を深める姿勢を示した。
松川工区は作業用トンネル(斜坑)を設けず、松川坑口から西方向に掘る。坑口近くの妙琴公園内に作業場を整備中で、19年度内は松川上流への桟橋仮設工事を進める。
約90万立方メートルの残土が発生する見込みで、羽場大瀬木線や中央道、三遠南信自動車道を使って同市下久堅小林地区と龍江地区、下條村睦沢地区の3候補地に運ぶ。
運搬開始は20年度からの予定だが、JRは羽場大瀬木線の供用開始後を約束している。
切石区の前田雄二区長は「区民の安心安全を守ることが工事の大前提。協議を続け、住民が納得する形で進めてほしい」と求めていた。
◎写真説明:切石で開かれた懇談会