東京―大阪を結ぶリニア中央新幹線計画で、JR東海の山田佳臣社長は21日、東京都内で沿線6県の知事らと会談し、中間駅の建設費について全額自己負担する考えを表明した。受益者負担の観点から地元に全額負担を求めてきた従来の方針を全面転換。建設費を大幅圧縮するため、必要最小限の機能を備えたコンパクトな駅を目指すとし、既存駅の改修や連絡設備の整備は大阪開業後まで計画しない考えも明らかにした。
山田社長が長野、神奈川、山梨、岐阜、三重、奈良の知事らと会談し、考えを伝えた。
「早期実現に向けて諸準備を間断なく迅速に進めるためには、中間駅建設費負担にかかわる問題を解消し、当事者が協力して取り組むことが大切」とし、自己負担で建設する意向を表明。6県には用地あっ旋に加え、残土処理場のあっ旋、アクセス道路や設備の整備などへの協力を求め、「工事促進にかかわる協力と効果を県全体の発展につなげる役割をお願いする」とした。
地上駅で350億円、地下駅で2200億円と試算していた中間駅の建設費を徹底的に圧縮して負担増に対応する姿勢も強調し、東京―名古屋間を2027年としてきた開業時期のめどは「変更せず、取り組む」とした。
名古屋までの先行区間4駅で3250億円、大阪までの6駅で5900億円の建設費が見込まれるが、地上駅の場合は2面4駅の島式ホーム、入出場口、改札設備、トイレ、階段、エレベーター、エスカレーターを骨格とする効率性と機能性を追求したコンパクトな駅にし、建設費だけでなく、開業後の運営費も圧縮。隣接する既存駅の改修や連絡施設の整備は「大阪までの開業を優先させるため、当面計画しない」とした。
一方、地元が併設したいと考える設備は建設費と維持運営費の地元負担を前提に工事計画に盛り込めるよう検討するとの考えも伝えた。
終了後の会見で山田社長は「のどに刺さった骨が取れ、計画が速やかに動く。その効果の方が大きい」との表現で、沿線との協議に要する時間を解消することの効果が負担を上回るとの認識を示し、「いろんなものがスピーディーに回っていくことが期待される」とした。
6県の知事らはJR東海の方針転換を好意的に受け止めた。岐阜県の古田肇知事は「リニアの早期実現につながる大きな前進」、山梨県の横内正明知事は「思い切った転換を高く評価したい。一番大きなネックが取り除かれた。これを契機に大きく事業が進んでいくとうれしく思っている」と歓迎した。
長野県からは和田恭良副知事が出席。「JR東海から積極的な答えをいただいた。持ち帰って期成同盟会と検討する。これがスタートだと思っている」と話した。